6.竹林美沙

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6.竹林美沙

「美沙、イヴ、ホテル予約しといたよ、ミラージュ東京。行きたがってたっしょ?」 「ありがとー。」 わざと頭が空っぽな返事をした。今年のイヴ、大学3年生のイヴはこの人とか。毎年同じことの繰り返し。麻が何度もチャペルの礼拝に誘ってくれるんだけど、結局はこんなことになっている。 毎冬、街にクリスマスソングが流れ始めると、とたんに私以外の皆が幸せそうに見えだす。身体をぴったりと寄せ合って歩く恋人たち。いいなあ、あの人たち、見つけたんだろうなあ、オンリーワンを。 私にはどうして見つからないんだろう。そばにいるだけで心が温かくなって満たされる人。焦がれて焦がれてどうにもならなくなるような、そんな人。会ったらすぐにわかる自信はある。そして見つけたら絶対に離さない。そんな人がどこかにいるはずだよね?それとも、もう遅いのかな。こんなに探しても会えないってことは、もう誰かのものになってるとか、それとも一生会えないとか。 「何、考えてんの?」 瞳を覗きこまれて、そのまま深いキスをされる。勝手に気分が高まってるらしい。適当に相手をした。いつものお定まりのコース。何も生まれない、身体だけの結びつき。後から襲ってくる虚しさ。こんなことしててどうなるんだろう。 「美沙、自分を大切にしなよ。」 心配そうな親友の麻の顔が浮かぶ。うん、そうだね、麻。でも、会えないんだよ、どんなに頑張ったって。心が寂しい。 私、このまま悲しい大人になるのかな。
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