12.ブルーとナイトとゴールド

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「あんたさあ、彼女いないの?」 「えっ。」 「何たじろいでんのよ、あんた、まさか-。」 「…いねえよ、いねえって。」 「間があった、間が。何よ、隠さず言いなさいって。あたしとあんたの仲じゃない。」 「どういう仲だよ。」 「わかんない。けど、ともかく教えなさいって。」 「何でだよ?」 「私はあんたが幸せだと嬉しいからよ。」 「へ?嬉しいの、お前が?何で?」 「あたしはあんたを男の親友くらいに思ってんの。だから、親友がハッピーならあたしもハッピーなわけ。わかる?」 「親友かあ。まあなあ、腐れ縁っちゃ腐れ縁だしなあ。」 「あんた、だいぶ差があるわよ。親友と腐れ縁とには。で?」 「で?」 「ふうん。随分しらばっくれるじゃないの。これは本気だな。」 「いや、本気っていうか。まだ始まってもねえし。」 「始まってないの?」 「おう。ただ気になるっていうか。」 「誰よ?」 「いきなりそこかよ。」 「うん、そこ。」 「ビー部のマネージャー。」 「おお、いいそれ。」 「いいか?」 「うん。あんた、ラグビーやってる時は少しはマシだもん。」 「マシっていうか、カッコいいんだろ?」 「百歩譲って、高校時代のキャプテンのあんたは確かにカッコ良かった。教室でのくだらないアンタとは別人みたいに。」 「くだらないとは何だよ。みんなのマスコットだったろうが。」 「けっ、マスコットっていうかねえ、そんな図体で。しかも自分で。」 「まあいいや、俺はその先が聞きてえ。なんでキャプテンの俺はカッコ良かったんだよ?」 「責任感だよ。みんなをひっぱる。それで顔が引き締まってたの。」 「うへえ。俺もしかしてブルーに初めて褒められた?」 「かもね。ともかく三年の秋は本当に良かったよ、あんた。」 「ああ、あの時ね。ほんと、毎日練習で冗談じゃなく死ぬかと思ったもんな。神ちゃん、怖かったしなあ。あれ、でもあの頃、ナイトも大変だったよな。あいつも毎日きつかったはずだよ。あんま、そう見えなかったけど。」 そうだった、はっきり覚えている。教室に遊びにも来なくなった。毎日が闘いみたいな表情をしていたナイト。 「そうだったね。みんな三年生、よく頑張ったよ。」 「お前もなんか頑張ってたっけ?」 「受験。」 「ああ、でもお前それ楽勝だったろ?なんであんだけよっちゃんとか薦めてたのに、T大にしなかったんだよ。一浪で確実って言われてたじゃん。」 「その先は?T大卒業した後は?私は自分が生きることで誰かを助けたいんだよ。」 「はーっ。何かなあ、お前のそういう所は確かにすげえと思うわ。」 「そう?ありがと。なんか今日は高校の時のこと、よく思い出す電話になったね。」 「だな。なんでかな。」
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