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「あんたさあ、彼女いないの?」
「えっ。」
「何たじろいでんのよ、あんた、まさか-。」
「…いねえよ、いねえって。」
「間があった、間が。何よ、隠さず言いなさいって。あたしとあんたの仲じゃない。」
「どういう仲だよ。」
「わかんない。けど、ともかく教えなさいって。」
「何でだよ?」
「私はあんたが幸せだと嬉しいからよ。」
「へ?嬉しいの、お前が?何で?」
「あたしはあんたを男の親友くらいに思ってんの。だから、親友がハッピーならあたしもハッピーなわけ。わかる?」
「親友かあ。まあなあ、腐れ縁っちゃ腐れ縁だしなあ。」
「あんた、だいぶ差があるわよ。親友と腐れ縁とには。で?」
「で?」
「ふうん。随分しらばっくれるじゃないの。これは本気だな。」
「いや、本気っていうか。まだ始まってもねえし。」
「始まってないの?」
「おう。ただ気になるっていうか。」
「誰よ?」
「いきなりそこかよ。」
「うん、そこ。」
「ビー部のマネージャー。」
「おお、いいそれ。」
「いいか?」
「うん。あんた、ラグビーやってる時は少しはマシだもん。」
「マシっていうか、カッコいいんだろ?」
「百歩譲って、高校時代のキャプテンのあんたは確かにカッコ良かった。教室でのくだらないアンタとは別人みたいに。」
「くだらないとは何だよ。みんなのマスコットだったろうが。」
「けっ、マスコットっていうかねえ、そんな図体で。しかも自分で。」
「まあいいや、俺はその先が聞きてえ。なんでキャプテンの俺はカッコ良かったんだよ?」
「責任感だよ。みんなをひっぱる。それで顔が引き締まってたの。」
「うへえ。俺もしかしてブルーに初めて褒められた?」
「かもね。ともかく三年の秋は本当に良かったよ、あんた。」
「ああ、あの時ね。ほんと、毎日練習で冗談じゃなく死ぬかと思ったもんな。神ちゃん、怖かったしなあ。あれ、でもあの頃、ナイトも大変だったよな。あいつも毎日きつかったはずだよ。あんま、そう見えなかったけど。」
そうだった、はっきり覚えている。教室に遊びにも来なくなった。毎日が闘いみたいな表情をしていたナイト。
「そうだったね。みんな三年生、よく頑張ったよ。」
「お前もなんか頑張ってたっけ?」
「受験。」
「ああ、でもお前それ楽勝だったろ?なんであんだけよっちゃんとか薦めてたのに、T大にしなかったんだよ。一浪で確実って言われてたじゃん。」
「その先は?T大卒業した後は?私は自分が生きることで誰かを助けたいんだよ。」
「はーっ。何かなあ、お前のそういう所は確かにすげえと思うわ。」
「そう?ありがと。なんか今日は高校の時のこと、よく思い出す電話になったね。」
「だな。なんでかな。」
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