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「おじいちゃん、ちょっと見えてきた感じがする。」
「そうか?そりゃ良かった。」
おじいちゃんはにっこりした。昔から変わらないおじいちゃんのスマイル。
日系人だっていじめられた幼稚園の時も、仲間外れにされた小学校の時も、好きになった子が転校しちゃった中学の時も、初めて失恋した高校の時も、全部おじいちゃんの前で泣いた。おじいちゃんはその温かい手を頭に置いて、「大丈夫になるさ」と言ってにっこりした。それで私は何となく安心して、また前に進むことが出来た。
「おじいちゃん、いつまでも長生きしてね。」
「あはは。ありがとうよ。ケイトが専属のナースになってくれると思うと心強いよ。」
「なるなる、絶対。」
私は力を入れて頷いた。
「あ、それで明日のイヴなんだけど、私3時から病棟で、4時には終わると思うんだよね。教会は6時からだよね。」
「うん、そうだな。6時からだから、君の母さんが腕を振るうディナーはその後だな。」
「ああ、ママのディナー。嬉しいような怖いような。」
「こら。」
「えへへ。じゃあみんなで一緒に帰ってきて、ディナーでプレゼント交換だね。」
「ケイトは相変わらずプレゼントが好きだなあ。」
「うん、大好き。食事とプレゼント、どっちも大好き。」
「子どもの頃から変わっちゃいないな。」
「あはは、そう言えば成長してないよね。明日は特製アップルパイを持って行くよ。あとみんな用のプレゼントもどっさり。」
「おお、ケイトのアップルパイか。うまいんだよなあ。」
「ありがとう。でもおじいちゃんのサンクスギヴィングのパンプキンパイには負けるよ。」
「年季が違うさ、年季がな。」
「恐れ入りました。」
私たちは大笑いした。冬のサンフランシスコの淡い光の中で。幸せに。
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