奇跡の商品開発

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 そして夜が明けた。不精な男が大あくびをしながらデスクを見ると、やはり整理整頓のされてないものだった。ノートパソコンの中に入れておいたデータを見ようと電源ボタンを押そうとした時、彼は違和感を覚えた。なんと、極めて綺麗だったのである。会議に出る前は手垢と埃とフケ塗れで触るのにも抵抗を覚える程汚かったキーボードが「キラキラ」と言うオノマトペフォントが見えそうになるぐらいに綺麗になっていたのであった。 誰か掃除でもしてくれたのだろうか? 既に早朝出勤をしていた同僚に尋ねてみた。 「俺のノーパソ綺麗だけど、お前が磨いてくれたのか? そんなことするぐらいなら俺のデスク全部掃除してくれればいいのに」 しかし、同僚は首を横に振った。 「はあ? 何が面白くてお前のノーパソなんて掃除しなきゃいけないんだ?」 「いやぁ、でもさぁ…… 俺のノーパソが新品みたいに綺麗になってるんだよ」 「知らねえってんだろ」 あんなに怒らなくても良いのに…… 不精な男は自分のデスクに重い腰を下ろした。すると、昨日、机の僅かなスペースに置いたスライムくんの蓋が僅かに空いていることに気がついた。 「あれ? 開けっぱにしちゃったかな? スライムくん大丈夫かな?」 スライムくんはそのままの柔らかさだった。昨日はあんなことは言ったが一応は「試作品」無くすと商品開発部(化学担当)がうるさい。不精な男はキッチリと蓋を閉め直した。
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