奇跡の商品開発

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 不精な男は今日も忙しかった。ノートパソコンをカタカタと触りながら頭をボリボリと掻き回すせいか、フケが雪のようにキーボードの上と舞い落ちる。それに混じり髪の毛も数本ボロボロと…… 瞬く間にノートパソコンは汚くなってしまった。 その日も会議が重なり、深夜の天辺近くまで仕事は及んだ。デスクに戻ってきたところで帰り際の真面目な同僚が渋い顔をした。 「ちょっと臭いますよ。風呂ぐらい行ってきたらどうですか?」 不精な男は会社近くの深夜営業の銭湯に行くことにした。寝湯にて身を預けること二時間…… 草木も眠る丑三つ時になってやっと目を覚ました。いかんいかん、疲れていたのと気持ちよすぎたことでつい眠ってしまった。早く会社に戻らないと…… 彼は慌てて会社に戻った。 自分のオフィスに戻った不精な男は信じられないものを目撃した。なんと、自分のノートパソコンの上を蛍光色に光る何かが這い回っているのである。人魂かオーブの類か? 彼は恐る恐る自分のデスクへと近づいた。すると、光る何かは「べちゃり」と、音を立てて床へと落ちて行った。 「なんじゃこりゃ」 不精な男は光る何かを摘み上げた。それはスライムくんだった。机の上から転がったのかな? そんなことを考えながらスライムくんを容器に入れようとした瞬間、叫び声が聞こえてきた。 「やめろー! 閉じ込めるな!」 いきなりの叫び声を前に不精な男は驚き、辺りを見回したのだが、オフィスには自分以外誰もいない。やはり先程の光は人魂か何かか? そして、何の気も無しにスライムくんを開いていたノートパソコンの上に投げ捨ててしまった。 「うわっ!」 声はスライムくんの方から聞こえてきた。投げ捨てられたスライムくんは不精な男に向かって怒鳴りつけた。スライムくんは水まんじゅうのような形となりその場でぷるぷるしているのであった。
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