奇跡の商品開発

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「拾ったり投げ捨てたり! これだから人間は!」 「え?」 「我は付喪神であるぞ! 捨てる神あれば拾う神ありと言うが…… 人が神を捨てる側に回るとはけしからん! 普通は神が人を捨てる方であるぞ! しかも、願いを叶えた大恩ある神を捨てるとは何事だ!」 「い、いきなり付喪神と言われてもな……」 不精な男は困惑したように頭をボリボリと掻いた。銭湯に行き濡れた髪も乾くぐらいに時間が経過していたせいか、フケがボロボロとキーボードの上に粉雪のように舞い落ちる。 「こら! いい加減にせぬか! 鍵盤が汚れる!」 「もしかして、掃除してくれたのって」 「儂じゃ」 付喪神は「えっへん」と言いたげに天狗の鼻のように突起を伸ばした。俺はおかしくなったのか? 狂ったのか? 疑問に思いつつ不精な男は付喪神に質問を投げかけた。 「えっと、付喪神って名乗ってますけど…… 何の付喪神様ですか?」 「見れば分かるだろ。スライムであるぞ」 「え? スライムの付喪神? RPGの世界から異世界転移してきたんですか?」 「馬鹿者! あんな弱っぴいスライムと一緒にするでない! 儂はお前らが作ったスライムくんの試作品が付喪神になったものじゃ!」 スライムが弱いと言う設定を知ってるこいつは何者なんだ…… それに言葉の節々から人を見下している感も出ている。この傲慢さ、間違いなく神様のものだ。不精な男は渋い顔をして付喪神を見つめ返した。 「あれ? でも付喪神って何年も大事にされないとならないもののはずでは」 「作ったばかりの新品でも、大事にされなくても付喪神になることはある。恨み半分に化けて出るやつもおるんじゃ。近頃の若者は御伽草子も読んでおらんのか」 新品の付喪神の割には中身は「おじいちゃん」だな…… そもそも御伽草子の「付喪神」を読んでいる若者の方が珍しいよ! と、不精な男は思った。 「で、その神様が何をしにきたんですか?」 「なぁにを言っとるんだ! 神様と言うのは人の願いを叶える者! 願いを叶えたのだぞ。感謝せい!」 「神様に願い事なんてしてませんが…… 近頃は忙しすぎて神社にすら行けないんですよ。お正月に初詣すら行く暇もないんです」 「お主…… 大変なんじゃな…… 難儀な人生じゃの…… まぁ良い、お主『誰か、掃除しといてくれないかなぁ』と願いをしたではないか。その願いを聞き届けたまでのことであるぞ」 「掃除って……」
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