奇跡の商品開発

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「うわ、汚ぇ」 付喪神は蛍光色で黄色く光っているのだが、埃と手垢を満遍なくその身に入れたのか黒ずんでいた。ラメも混じっているのだが、フケと混じり合ってどっちがラメだかフケだかよくわからなくなっている。髪の毛もビッシリ全身に絡みついていた。 つまり、かなり汚い物体である。 「わかったわかった。感謝するよ。普通ならそのままゴミにするところだけどお焚き上げにしてやる……」 不精な男はキーボードの上を改めて眺めた。新品同様、納品されたばかりの時の輝きがそこにあった。よく見ればディスプレイもウェブカメラも全てが輝いている。 「流石に全部を綺麗にするのは苦労したわい。付喪神と言うのはなったとしても気づかれずに捨てられるのが大半じゃて、お主は神社に行く暇もないぐらいに忙しいのだろう? そのままチリ紙にでも包んで塵箱(ゴミバコ)にでも捨てるが良かろうて。さっきは捨てることを咎めたが、急なことでつい怒ってしまっただけだ、ゆるせ」 はいはい、忙しい私めにお気を使って下さってありがたい限りです。と、不精な男が思った瞬間、彼に閃きの雷霆が走った。直様に付喪神をプラスチック容器に入れて、商品開発部(化学担当)の元へと走った。
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