奇跡の商品開発

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商品開発部(化学担当)は深夜にも関わらずに何やら実験を繰り返していた。そんな化学実験の最中に不精な男は息せき切って飛び込んできた。 「あれ? こんな夜更けにどうしたんですか?」 それを言いたいのはこっちだよ! 不精な男はその言葉を呑み込み、尋ねた。 「おい! このスライムの調合やった奴はいるか?」 「あ…… 私ですけど……」 対応したのは女子社員、白衣を纏った理系女子である。 「まだ出来るか?」 「なぁに言ってるんですか。あなたが子供が楽しめないから駄目って言ったんじゃないですか。水の割合とか思い出せませんよ」 「思い出せ! 思い出せないならその頭の中身カチ割って俺が割合を調べる!」 不精な男は深夜故にテンションが上がっていた。理系女子はその気迫に押されて再びスライム開発に乗り出すことにした。 「わ、分かりましたよ。水の割合なら何度か試せば同じドロドロ具合を引き出すのは簡単です」 その後、水分控えめ硬めのスライムくんが再び開発された。理系女子を始めとした商品開発部(化学担当)の面々は訝しげな顔をしていた。 「自分で作っておいてなんですけど…… 子供にウケませんよ…… 子供が楽しめるようなネバネバ感じゃないですよ」 「そうですよ、あなたの言った通り子供にウケないと売れませんよ…… これまで通り水分たっぷりネバネバドロドロの方が…… まさか苦情に屈したんですか?」 不精な男はドヤ顔をしながら言った。 「神様のお告げがあったんだよ。これでいい! 後はプロモーションだ!」 不精な男はブログやSNSを駆使し、スライムくんの宣伝を行った。子供が手につけて遊ぶ用途ではなく、ノートパソコンの掃除の用途としてである。商品開発部(化学担当)が作った従来品より清掃効果があることをPRし続けたのだった。 商品開発部(化学担当)も玩具のスライムがキーボード清掃の用途の為に作られたクリーニングジェルに負けるはずはないと思っていたのだが、実際の吸着具合は玩具のスライムくんの方が倍近くあり、完全敗北を喫してしまった。
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