序章「入社、昇進」

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序章「入社、昇進」

日本には妖怪と呼ばれる存在がある。 昔こそ存在を信じられてきたが今では忘れ去られている。 空想上の生き物として。 霊能者、というのも同じだ。イタコ、霊媒師、呪術師、陰陽師、 そんな能力を持つ人間がいるはずがないと言われているのだ。 花屋敷カナエ、当時18歳。 高校3年生である彼女は他人とは違う秘密があった。 全国でも1、2を争う敷地を持つ静岡県の高校で就職を主な卒業後の 道とした商業科に所属していた。 彼女は名指しで警察官に呼び出された。悪いことでもしたのか、とか 何か犯罪に巻き込まれたのか、とか聞かれた。 そういうわけでは無い。 「警察官!?」 目の前の男に向けてカナエは言った。男は黛《まゆずみ》裕次郎と 名乗り、警察署のとある課の東京都支部の支部長をしているらしい。 「そう。君、卒業したらうちに来てくれないか?」 「でも私…警察って、結構大変ですよね。耐えきれる自信が」 「私はね、君と同じだよ。私は霊能力者。他人とは違う 見えないものが視える人間だ」 裕次郎は霊的な存在を見ることが出来る。結界を作り出すことが 出来る男だ。彼はカナエの事を見抜いていた。そして彼女が持つ 高い霊力の事も。 「その力を私たちに役立ててくれないかな。怪異事件解決の為に」 年が明けた4月。 カナエは彼の手ほどきで警察署、怪異特務課に入った。 最年少、そして最速で課長に成り上がった高卒女子。 「ちょっと待った。流石に出世し過ぎ!」 電話に向けてカナエは声を荒げた。 相手は裕次郎だ。彼が推薦して彼女が静岡県に存在する特務室の リーダーになったのだ。 『誰も反対していないよ。普段通りにすればいい、普通に仕事を すればいいからね。頑張って』 一方的に電話は切られてしまった。 早すぎる出世、昇進に戸惑うカナメはふぅ、と溜息を吐いた。
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