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平氏が東国で威を張り、傍若無人の振る舞いをするのには、理由がありました。
「飯綱、という鬼神もどきと、その技を使う異人もどきの飯綱使いどもがいる」
平某は何人かの飯綱使いを従えていて、己の欲望のままにその力を振るいます。
胡蝶が下毛野金時だけでは足りぬ、と考えたのは、この飯綱使いどもがいるからでした。
彼女自身が老境で国守の一行と上京の旅に出られない今、出来ることといえば、生まれ故郷で長をしているという異人、幼なじみの仁王丸に助けを求めることだけだったのです。
「胡蝶のいた頃とは違う。滅びゆく一族は今の長の考えによって、ほとんどが山を下り、倭人に紛れて暮らしている。異人も、長ともう一人のみしか残っていない、という有様だ」
胡蝶という嫗の願いは潰えたかに思えました。
ところが側で話を聞いていたトオルが、異人でもないのに、「俺が行く」と言い出したのです。
祖母のなでしこは孫の身を案じて反対しましたが、祖父の仁王丸は、「お前の中に鬼神が居るか、探ってみるか?」と、尋ねました。
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