二人と世界の終焉

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 ロケットが頭上を通り過ぎた午前零時。僕らは手を繋いだり離したりを繰り返している。彼女は早朝、宇宙船に乗って遠くへと旅立つ。一方で僕は偉い人たちが決めた仕事のためにここに残る。僕は彼女が旅立つその前に最後の挨拶をしておきたかった。二人は住み慣れた街にある誰も使わなくなった鉄道の沿線をなぞって歩く。 「あの辺、前まで焼肉屋があったよね。…… 今はもう無いけど」  彼女は左向かいにある廃墟と化した雑居ビルを指さす。そこには三ヶ月前まで小さな焼肉屋があった。僕らが出会った店。二人の手は離れている。 「悲しいよな。次々と店が無くなって」 「でもそういう世の中じゃん。仕方ないよ」    この頃いろいろな店が閉店している。沿線をなぞって歩きながら彼女が指さした店は殆どが無くなっていた。 「まるで、僕らみたいだね」  僕は思わず呟いてしまった。すると彼女は何も言わずに僕の手を握ってきた。 「こんなことにはなって欲しくなかったな……」  彼女の目には少し滲んでいる。彼女はもうすぐこの街から居なくなってしまう。そうしたら、もう二度と会うことはできない。僕らは気がつくと、廃墟街に出ていた。壁にヒビが入ったビルたちは僕らに二人と世界の終焉を告げているようだ。 「あなたも来れば良かったのに」  彼女はそう言って涙を流した。僕は何も返せない。行けない。僕は君の世界へは行けない。だから、握られた手をもっと強く握った。 「それができたら……、そうしてるよ」    自分の目から涙が出ていることに気がついた。歩みを止める。君が僕を抱きしめて、泣き合う。僕らはしばらく抱き合って泣き続けた。朝が来たら二人は別れなければならない。一方は新しい世界へ、一方は終わった世界へ。
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