階段の上の管理者

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 *** 「ほう、面白いことになったなあ」 「何が面白いもんかよ。夜中に人の土地に踏み込んで、わけわかんねーことしやがって。ムカつくったらありゃしねえ」 「まあまあカズマ。あんまりカリカリするな」  翌朝。俺は昨晩あったことを、ケンジじーさんに愚痴ることにした。すっかり白くなった髭を揺らしながら、ケンジじーさんはからからと笑っている。まったく、他人事だと思いやがって。 「しかし、結露していたスーパーの袋か。やや遠目から見てわかるということは、相当冷たいものが入っておったようだな。今は十一月。夏ならともかく、ちょっと冷たいくらいのものではそうそう派手に結露もするまいて」 「……あ」  言われてみればその通りだ。墓地の中、ケンジじーさんを件の墓の前に案内しながら俺は気づく。  袋がパンパンになるほど、凍った保冷剤を詰め込んでいたとしたら。中に入っているものはアイスクリームなどの冷凍系の食品か、あるいはそれくらいまで冷やさないといけないものだったということになる。  最初はビールか、と思ったが。よくよく考えれば、ビールを買うだけで保冷剤というものはあんなにたくさん貰えるものであっただろうか。そもそも、墓場にビールを持ち込むのもおかしい。彼らは何か作業をしたら、特に飲み食いする様子もなくすぐ立ち去ってしまったから尚更である。 「お前の言う通り、若い男女が住んだり利用したりするような施設なんぞ、この丘の上にはない。マンションも潰れちまっとるし、このあたりに残ってるのは古い戸建の家が少数のみ。お前が見たことのない人間達ならこの近隣の住人でないのも確かだろう」 「だよ、な」 「つまりどうしてもこの場所に来なければいけない特別な用事があったということだが……ただ墓参りをするだけならば昼で問題ないはず。夜、周囲を気にしながら来たということは、やましいことがあるからに他なるまい。大人なら、そうそう肝試しということもあるまいて」  やましいこと。  嫌な予感を俺が感じ始めた時、丁度件の墓の前に到着した。
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