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はっきり言って、冗談ではない。俺が管理する墓地(といっても、管理人とは名ばかりで実際なんとなく見張ってるだけの仕事だが)でそんな身勝手なことをされてたまるものかと思う。俺に給料をくれる、お寺の高齢の住職にも申し訳がたたないというものだ。なんとかして、あの連中がやったことを暴き出し、かつ二度と墓地に新たな死体を隠す、なんて馬鹿な真似をされることがないようにとっちめてやることはできないものか。
俺はケンジじーさんと共に、近隣の連中に片っ端から声をかけてやることにした。警察に通報してやれれば早いのかもしれないが、生憎俺達には携帯電話なんて便利なものがない。もっと言えば、人様の縄張りを荒らしてくれた馬鹿どもに自分達で報復してやりたい気持ちもあったのだ。
「ほら早く早く早く!見つかる前に終わらせるのよ!」
その日の夜も、再び四人の男女は現れた。男達は相変わらず、その手にがっつりとスーパーの袋らしきものを持っている。あれがただの生ゴミだったならまだマシ――いや、生ゴミでもクスリでも、人様の墓を荒らしてモノを隠そうなんて罰当たりなことを考える時点でダメダメのダメである。俺と近隣の友人達は全員、墓石や樹木の後ろに隠れて息を潜めていた。
犯罪者を捕まえる方法は二つに一つ。決定的な証拠をゲットするか、現行犯で抑えるか。奴らに逃げられた場合のために、出来れば証拠もしっかり握っておきたかった。奴らが持ち込んできた死体入りと思われるスーパーの袋と、できれば奴らのうちの誰かの携帯電話の一つでも抑えておきたいところだ。
二日目ということもあって、四人は若干油断しているらしい。リエの指示の元、今日も樹木葬の墓地の周辺にやってきて地面をごそごそと掘り起こしている。スーパーの袋から保冷剤と共に掘り出されたものを見てやはり、と確信した。それは、人間の生々しい腕。奴らはいくつもの個人墓に少しずつ、死体を分散して入れることによって隠そうと考えたらしい。
なるほど、墓地なんてものは滅多なことがない限り掘り起こされることのないものだ。死体が見つからなければ、犯罪は立証できないことが多い。木を隠すなら森の中とはよく言ったものである――実に胸糞悪い話であるが。
「あのクソ女もざまあないわよね。死んだ後バラバラにされて、見ず知らずのばーさんの墓にねじ込まれるハメになるなんて!」
クズ女は楽しげに嘲笑し、相変わらず上から目線で土を掘り起こす男達に指示を出している。
「まあ、クソに相応しい末路でしょ。こんな辺鄙な墓地までわざわざ来たんだもの、ここなら絶対に見つからな……」
女が、そこまで言った時だった。俺は怒りのまま、肩手を上げて声を張り上げた。
「よっしゃお前ら!全力で、かかれええええええ!」
次の瞬間。
墓石の影から飛び出してきた無数の影に――四人の男女は濁った悲鳴を上げて、悶絶することになるのだった。
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