何度も描いて

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何度も描いて

 今日は僕が描いた「月に願いし君への想い。君は何を想う」について。  以前、我が家の息子が障害児だと書きました。ただ初めは狼狽えるばかりで未来に希望を失いましたが、日に日に考え方が変わってきました。  妻も僕も医療従事者であり、息子も病気のせいで病院によくお世話になっています。  そこで突然起こる検査や採血。心の準備ができていない子供は健常の子であっても怖がります。障害児は尚更。  更には掲示物の多さと文字の多さ。外国人が日本の不便さを感じる施設ベスト3に入るだけあります。  この時僕は「自分の仕事を嫌いにならないでほしい」と息子に思いました。それで検査の内容をすべて絵で理解できるように作ってみました。最初は上司に馬鹿にされちゃいましたよ。 「くだらんもの作るな」とか「大変なら奥さんパートでもいいんじゃあ」とパワハラめいた小言まで。絵カードも「子供騙し」とか「子供っぽい」とか指摘を受けて。  ならばと思い患者にアンケートを取ると、職員たちとは真逆の意見が。 「わかりやすい」とか「不安だったけど、たいした検査じゃないとわかりホッとしています」とか「こっち向きに寝てればいいんだね」とか老若男女問わず優しい意見が返ってきました。絵を「子供っぽい」と指摘する患者は一人もいなく。  患者にとって絵の良し悪しは関係ないみたい。大人っぽい絵ってどんなの?  それをいろいろな全国学会で発表し、2回優秀演題に選ばれ論文を書きました。放射線とは分野が違う発表に異端児と思われていたかもしれません。  これを機に他の病院からも掲示をさせてほしいと連絡があり、データを渡しました。でもこれだけじゃあ池の中の蛙と同じ。  町の人たちの冷たい視線は変わらない。  数年前に「障害者差別解消法」が施行されたけれど、その認知度も低い。  障害者に関する書籍は専門書や親の書いた苦労話が多く、それに次いで本人の暴露本ばかり。同じ境遇の人は読むかもしれないけれど、一般の人たちはあまり読んではくれない。  ならばと思ったんです。  誰でも読みやすい小説を自分が描けばいいかもって。    物語で出てくる障害は実際息子がやっていること。イチゴに北斗神拳のような穴を開けちゃったときにはひどい罵声を浴びて怒られましたよ。  専門書のように解説する気もないし、苦労を分かち合いたいわけでもない。ただこういう子がいるという事実と、その子が困っていたら少しだけ配慮をしてほしいと願っただけ。偏見染みた態度より、少しだけ愛の手をというのがテーマでしょうか。  一度目は解説が多すぎる物語を描き、別サイトで二次落選。ある人から内容も登場人物もいいのに、説明が多すぎ。会話になってないし、皆まで言わなくて読者に任せましょうと。  二度目は解説を省き、病気を伏せて、テレビからのアナウンスを増やし一次落選。その代わり編集者さんからテレビのところをリアルに描いてほしいという貴重な感想を頂きました。  それで完成したのがこれです。三度描いた同じ作品です。ただ今度はリアル部分が増えて文字数が多くなりました。これがネックかもと思っています。減らす努力をして4度目を描こうかなあ。  ちょっと主人公を変えてみるかと「月が食らう花」も描き途中。  とりあえず別サイトで現在一次通過中。もうすぐ、月末に二次の発表です。  出版社さんは利益遵守があるから厳しいかなあ。  でも書籍化してほしいなあ。  何度も描くなんてしつこいですよね。  でもある絵を見て思ったんです。何度も描かれた「ムンクの叫び」。僕も何度も描いてやると。描いていいんだと。 「コンビニ人間」はうまく描かれていますね。  僕は息子じゃないから当事者主人公として描くの難しいな。なんか嘘っぽくなりそうで。
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