阿鼻叫喚のタルタロス

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 ***  どうにか清掃も整備・点検も終わり。いよいよ、今年のポッド研修初日の日が訪れた。  県内に複数ある施設のうち、此処で一日に捌ける人数は頑張っても三百人程度である。施設が他にもあるとはいえ、県外からも利用者がやってくることを考えれば、相当ハイペースで回さなければならないのは言うまでもないことだった。一ヶ月ばかりフル稼働になるのも当然と言えば当然である。  ひとりにつきかかる時間は三十分程度とはいえ、それ以上の時間をかけて毎日掃除や整備をしなければならないのだ。故障やトラブルがあったらもっと時間がかかることになる。どうか面倒事が起きませんように!とお祈りをしながら、俺はぞろぞろとやってくる子供達をポッドのある部屋に案内した。 「後ろから、間を開けないで一つにひとりずつ入ってください!椅子に座ったらこちらでベルトやヘッドギアの装着を行いますので、中のパネルなどには手を触れないでお待ちくださーい!」  学校からそのままバスでやってきた子供達は、みんな制服姿だった。今回はあまりレベルの高い学校ではないのか、こうして案内している間も随分とお喋りが煩い。 「マジでかったるーい」 「だよねー。移動時間長すぎ。もう疲れたんだけどまだこれから座ってないといけないとかー」 「一時間くらいかかるんだろ、途中でトイレ行きたくなったらどうすりゃいいんだか」 「面倒くせえ」 「二人で一緒に入っちゃだめー?」 「何でスマホ持ち込んじゃいけないの?」 「ペットボトルはー?」  あーもうやかましい!俺はぴくぴくと青筋立てながらも、無理やり笑顔を作ってひとりひとりに説明をする。全員事前にしおりはもらっているはずだし、そもそも先生達にも丁寧に説明を受けて来ているはずなのに、何でもう一度こっちで注意事項を確認させてやらねばならないのか。 ――我慢我慢……!これも全ては最後の焼肉パーティのため!  ぶーぶーと煩い中学生の少年少女達をどうにかポッドに入れ、ベルトとヘッドギアを装着。それから、中の機器を電磁波で狂わせる危険性のある携帯電話などを持ち込んでいないかどうかも入念にチェック。
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