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全てが終わった時には、彼らが室内に入ってきてから十五分もの時間が経過していた。明らかに予定時間を過ぎている。これが大人しくしてくれるおぼっちゃま学校の生徒などならスムーズに事が運ぶのに――なんてことを言っても仕方ない。中学生なのに派手な髪色の少年少女達を見てため息をつきながら、俺は全てのポッドを閉めてロックをかけた。
さて、ここからが本番だ。
「全てロックかけましたー!」
「よし。ニキ、換気扇のスイッチは?」
「入ってまーす、大丈夫でーす」
「よし」
揃いの紺色の制服を着た職員達と共に一つ一つ指差し確認をした後。先輩が遠隔操作のモニターの前で、宣言した。
「それでは、起動する」
瞬間。
しゅうううう、と空気が抜けるような音。数秒の後、俺のすぐ隣のポッドからドン!と大きな音がした。見れば、中に入っている茶髪の女の子が、派手にガラス面に拳を打ち付けている。静かにしてくれよなあ、と思てはみるものの、こちらの声はポッドの少年少女達に届かない仕組みだ。逆に、彼女らの声も外には一切漏れないようになっている。真っ青な顔で少女は何かを必死で叫んでいるが、何を言っているのかはさっぱりわからない。
ただ、振動だけは伝わる。少女がガラス面を繰り返し叩くたび、しっかりと固定されているタマゴ型のカプセルがガタガタと揺れるからだ。
「もう、ほんと……」
少女はやがて、目から、耳から、鼻から、口からとドス黒く染まった血を噴出し始める。暴れる拳も派手に打ち付け過ぎて鬱血し、爪をがりがりと立てるせいか指先からも激しく出血し始めた。やれやれ、と肩を竦める俺。
「暴れても無駄なんだから、もっと静かに死んでくれよ」
ガタガタと揺れているポッドは彼女のものだけではなかった。殆どのポッドが激しく揺れ、あるいは中から打ち付ける鈍い音を響かせ続けている。一分、二分、三分――暫く鈍く重い不協和音が続き、やがて唐突に大人しくなった。先輩の方を見ると、両腕で大きくマルを作っている。どうやら、全てのポッドの生体反応が消失したということらしい。
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