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再度、しゅー、という音が響き渡る。カプセルの中に放出された毒ガスが、床に接続されたパイプから排出される音だった。やがてガスが綺麗に抜かれると、全てのカプセルのロックが外れてぱかりと開かれることになる。だが、開かれたカプセルはどれもこれも血まみれで、さっきまで文句を言うばかりだった少年少女達は誰ひとりとて動き出す気配はなかった。
「やっぱり、来年からは睡眠ガスの導入も検討した方がいいよなあ」
先輩がやってきてため息をつく。
「毎回こうも暴れられたんじゃ、ポッドが汚れるし、壊れる原因になるし、部屋の外まで音が漏れる危険もあるし……うっわくっせぇ!この女ウ●コめっちゃ漏らしてる!」
「毎年のことでしょ先輩ー。気持ちはわかるけど。てか、早く処理しないと」
「そうだな。じゃあ交代役の方々、入ってきちゃってくださーい!」
先輩が声をかけると、部屋の奥のドアが開き、中から灰色の怪物達が入場してきた。全身が無視のようなもので覆われ、触手のようなものを五、六本生やしている。地球人に言わせたら、さぞかし気持ち悪い姿というやつなのだろう。なんせ連中は、触手なんか体に生えてないし、手足も二本ずつしかないし、肌の色は薄いオレンジみたいな色であるのが当たり前だと思っているのだから。
惑星“リオネットVG”星人。それが、彼らの正体であり――俺達の正体でもある。
交代役の彼らは全員ポッドの横に一人ずつ立つと、触手をしゅるしゅると伸ばして遺体に触れた。すると、彼らは全員、死んでいる中学生達と全く同じ姿に変身する。中身だけではなく記憶も九割くらいは読み取っているので、ほぼ完璧な再現が可能と言って良かった。――彼らがこのまま、元の中学生のフリして自宅に戻っても、気づくことが出来る者は存在しないだろう。
そう、これがポッド研修と呼ばれる新しい法律の、正体。
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