講義の復習 

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講義の復習 

 気持ちいい春風がふき、カーテンが気持ちよさそうに揺れる静かな女子校の教室。  そこに通う生徒達は帰ったり、部活動にいったり…。さっきまでの教室内の活気が嘘のようだ。  黒板には何かの授業をしたのであろう、いろいろな単語とそれを説明するかのような図式が書かれている。    そこにポツンと25歳ぐらいの男性が1人、本を読んでいた。 顔を真っ赤にしたと思えば、前に書かれている黒板の単語と本を見比べ…、そしてさらに赤面する。  一度本を閉じたかと思うと、しばらくすると意を決したように、また本を開き続きを読み始める。 今、俺は補習を受け終わったところだ。 しかも講師は……。 俺が働いている高校の数名の女生徒……。 先に言っておく!! 決して!!決して、やましい事は、全く、これっぽっちも…、微塵もない!! 説得力はないかもしれないが、俺は年上のしっかりした女性がタイプだ。 だから、俺より年下の未成年。 しかもしっかりしているとは思えない、彼女達は全く、本当に全く眼中にない!! その彼女達に先生である俺が、なんの補修を受けていたかと言うと……。 『BL基礎知識』講座だ。 BL!! BL!! いや『BL』という言葉は知っている。 『ボーイズラブ』だろ? 本屋のBL棚はとても広くて、表紙は……。 なんというか、物凄く濃厚……。 あの表紙の蕩けるような表情は、BL知識皆無な俺でも、ドキッとする。 読んでみたいかと言われれば、読んでみたい。 だって、あんなに沢山の人を魅了するものが、あの本の中に濃縮されているかと思うと、興味あるとしか言えない。 なぜなら、俺は国語の教師。 読んでみたいと思わない方がおかしい。 だが、購入するとなると……。 あの表紙の本をレジに持っていくまでが、恥ずかしくてできなかった。 だが、今日、俺はそのBL本を持っている。  自称『学校一の腐女子‼︎』と公言する美術部部長、峰山(みねやま)一帆(かずほ)厳選、漫画2冊、小説1冊をテキストとして手渡された。漫画は濃厚エロスと、涙なしには読めない切ないオメガバース?と言うジャンル、小説はがっつり官能小説だ。  これを次回の補修である3日後までに読んで、感想を述べないといけない。 しかも単語の小テストもある。 あ〜、どうしよう……。 今日習った単語は図入りで黒板に書かれている。 さすが美術部部長。 良くも悪くも、絵がわかりやすい……。 男性の大事なところ付近の、部位の名前ぐらいは俺だって知ってるが、『先生、おさらいね』って、図式で教えられるし。 あ、腸の中の表現の仕方は、知らなかった……。 それに「ザビエル」って、隠語なのか⁉︎ 「ザビエル」は歴史上の「フランシスコ・ザビエル」だ‼︎ 決して「THE BL」とは読まない!! これは早くメモって黒板を綺麗にしないと、誰かに見られたら、俺がBL授業をしたかと誤解されてしまう‼︎ 急げ!! 俺!!  読んでいた漫画を閉じると、(はら)颯汰(そうた)は急いでメモ帳に書き写し始めた。 『攻め』(左)(タチ) カップル側の男性側である人。 行為の際、挿入側……。 挿入側!? 『受け』(右)(ネコ) カップル側の女性側である人。 行為の際、挿入される側……。 挿入となれば、やっぱりアソコだよな…。 痛そう……。  颯汰は書き写しながら、先ほど見た漫画の中の絵を思い出してしまい、顔から火が出るか!?というほど赤面した。 思い出して恥ずかしがってたら、時間がかかって仕方ない。 平常心、平常心……。 『総受け』 作品内のどのキャラと合わせても、受けになるキャラ。 とにかくみんなから愛される……。 『総攻め』 総受けと逆で、どのキャラと合わせても攻めになるキャラ。  写経をしているかのよう無心で、颯汰は黒板を書き写す。 無心だ、無心……。 英単語を覚える感覚で、覚えたらいいんだ……。 あと少しで写し終わる…。 そんな時、
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