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絶体絶命 ②
今は20時。
居酒屋チェーン店にある個室。
颯汰t柳田との約束通り、一緒に飲んでいた。
「それにしても、今日、教頭先生に怒られましたね」
職員室に響き渡る…ほどの大きな声で俺と一緒に教頭に怒られたはずの柳田は、それが楽しかったかのように思い出し笑いをしている。
「柳田先生。巻き添いを喰らわせて、すみません…」
颯汰が申し訳なさそうに言うと、
「いえいえ。むしろ原先生と一緒に怒られて、ラッキーでした」
柳田は意味不明な事を言い、嬉しそうに微笑んだ。
教頭に怒られたのは、颯汰が校内放送で呼び出しを受けてから、何分経っても俺が職員室に帰ってこなかったから。
電話してきた相手が悪かった……。
教員内では有名な、モンスター化しそうな保護者。 しかも噂好きときた。学校側としては、できれば波風立てたくない相手だ。
教頭からしてみれば『苦情かも……』と、不安があったみたいだが、電話の内容は『今日まで提出の進路希望調査書、出せてなかったんですが、大丈夫ですか?』で……。
『全く問題ないですよ』と、伝えると本当に一安心したように、電話を切った。
学校側からして、そんな内容でよかった〜』と、一安心したところだった。
それで、この話は終わりかと思ったが…。
やはり教頭先生には怒られ、助け舟を出したつもりの柳田先生も一緒になって怒られ…。
お互い災難な日だったな……。
「それにしても原先生。どうして腐男子じゃないのに、あんなレアなBL本、持ってたんですか?黒板も、大変な事になっていたし……」
「それは……って!!!!黒板!!消してない!!」
!!!!
どうしよう!!
確認せずに、帰ってきてしまった!!
今からでも遅くない。
消しに行こう!
行くしかない!!
真っ青な顔で、スクッと勢いよく立ち上がった颯汰に、柳田は
「あ、消しておきましたよ」
と、何事もなかったかのように言い、ビールを一口飲んだ。
あ〜、柳田先生。
まじ救世主!
「ありがとうございます!!」
無意識に颯汰は柳田の手を両手で握ると、柳田は顔を真っ赤にして俯いた。
ん?
柳田先生、顔が真っ赤だ。
酔ったのかな?
「柳田先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫…です…」
赤面した柳田はまだ顔をあげない。
「でも、顔…、真っ赤ですよ…」
「…その、原先生が、俺の手を…握られてるので…」
うん?
颯汰が柳田と自分の手を見ると…
「!!!す、すみません!」
急いで手を離した。
「すみません、無意識だったので気が付かず…」
男に手を握られるのは、嫌だろうな…。
だが、柳田の頬は赤らんだまま。
ん?
本当に酔ってる?
颯汰が柳田の顔を覗き込むと……、
「俺、憧れだったんです!!BL的展開‼︎こう、無意識に手を握ってしまう。そして、そこから2人意識し合う…っとか、王道すぎて最高です!!」
キラキラした目で柳田が蒼汰を見つめる。
「原先生、最高な設定、ありがとうございます」
今度は柳田が颯汰の手を握る。
なに!?
本当にここから何かが始まるのか!?
やめてくれーーー!!!
「!!柳田先生…手、離していただけません…か?」
「!!あ!!すみません!つい……。でも、原先生の手って、柔らかいんですね」
名残惜しそうに颯汰の手を離す。
えーーー!!
柔らかいって!?
「柳田先生……、ここから…何も始まらないですよね…」
恐る恐る颯汰が柳田に聞くと、
「無いですよ〜。あくまでBLの中ではの話で、原先生は好きな先輩であって、恋愛対象ではないので」
満面の笑みで柳田は蒼汰の顔を見た。
「それは、良かったです…」
颯汰は胸を撫で下ろす。
本当に良かった…。
何かのきっかけを作ってしまってなくて。
「それで、聞かせてくれませんか?どうして原先生が峰山から『BL講座』を受けることになったかを……」
聞いてくれますか!?
俺の災難話…。
「それは、遡る事10時間前……」
颯汰が話し出すと、興味津々という表情で柳田が蒼汰の話を聞き入った。
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