甘い罠 ①

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甘い罠 ①

「柳田先生、俺の不憫な話聞かれて、どう思われます?」 本当に最悪だ……。 「え?最高の展開じゃないですか!!」  颯汰の話を食い入るように聞いていた柳田が、目をキラキラさせる。 「だって、そこからBLの扉を開き、新たな世界を知る…。BL知識が0だからこそ、BLの良さを存分に吸収できる‼︎最高ですね!」  夢見る瞳で柳田は颯汰を見つめる。 ………。 俺の不憫話。 聞いてもらう人、間違えたかな…? 「いや、たしかにBL知識0ですけど、新しい扉を開けるつもり…ないですから……」 確かに絵は綺麗だったし、チラッとしかみてないけど…、話の内容も面白そうだった。 気になる?と聞かれたら…。 ま、気になるけどさ、 だからって、わざわざ自分からは調べたりはしないな…。 「でも、週明けにBLのテスト、あるんですよね?」 ぐっ……!! そうです……。 「テスト不合格だと、どうなるんですか?」 「追試…です…」 そうだ。 峰山に『テストなんだから、追試もあります』って言われてたんだ…。 「じゃあ知識、頭に入れるしかないですよね」 柳田は眩しいほどの笑顔を颯汰に向ける。 そうですよ。 そうなんだけど…。 「あの手渡された漫画(テキスト)では、頭の中で再生される映像が過激すぎて、勉強にならないというか…」  漫画の中は、常にみんな裸体で汗をかいていて、それを見せられると、入ってくるはずの単語達が、まったく頭に入ってこない。 「たしかにあの漫画は上級者向けですからね…。あ!!そうだ!!いい案、思いつきました!!」  キラキラさせていた柳田の瞳が一段と煌めく。 なんだその瞳は!! 嫌な予感しか…しないのは、なぜだ…。 「俺の家に初心者向けの本、あります!!それで勉強しませんか?俺、色々教えますよ」 !!!! おーっと、やっぱり嫌な予感的中!! これ以上、この話で柳田先生と(つる)むのは…… 「いやー、そこまでしていただかなくても…。柳田先生のご迷惑になるかと…」  颯汰がやんわり断ろうとしたが、 「そんなお気遣いなく」  柳田に颯汰の本当に言いたいことは伝わらない。 「だって原先生。追試になったら、また峰山の講義受けないとダメなんですよ。それだったら、俺と勉強して一発合格したくないですか?」  柳田は魅力的な言葉で颯汰を誘う。 たしかに、峰山達との講義はしたくない。 毎回誤解されないかビクビクしないといけないし…。 1回だけ。 1回だけ、柳田先生に教えてもらうのも手だな。 「どうされます?一度、俺から教わってみませんか?俺、教えるの得意ですよ」  天使のような柳田の微笑みにつられ、 「1回だけ…ですからね」  颯汰は天使のような…悪魔のような囁きを聞き入れてしまった。
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