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柳田の部屋での勉強会 ①
柳田先生って…
俺と同じ職業、教員ですよね。
お給料もほぼ変わらないですよね…
じゃあどうして、こんな大きな部屋に住んでるんですかー‼︎
颯汰が連れてこられた柳田の部屋は、駅近のタワーマンションの一室。
一人暮らしなのに2LDKで、ダイニングは15畳。
アイランドキッチンにコンロは3つで、家電は最新型。ソファーだっていい素材でできているのは素人の颯汰だってわかるほどだし、テレビは……大きすぎて何型なのかわからない。
「柳田先生の部屋…、すごいですね…」
颯汰は心の声を抑えられずにいると、
「そんな、そんな…。大したことないですよ」
柳田は謙遜する。
じゃあ、俺の部屋は…?
犬小屋になるのか!?
「実はここ、兄の部屋なんです。今、兄は日本にいないので借りていて…。家具も家電も兄の物なんです」
柳田が苦笑する。
「でも…、これだけは俺‼︎ってのが‼︎」
そういうと、柳田は颯汰の腕を掴み、ある部屋へ連れて行き、バンッとドアを開けると…。
!!!!
ここは!!
「俺の癒し部屋です‼︎」
そこにはダブルベットと壁一面の本棚には、ずらっと本がびっしり並んでいる。
もしかして…
これ全部!?
まさか!?と颯汰が柳田の方を見る。
「そうです!!これ全部BL漫画と小説です!!」
!!!!
やっぱり!!
「すごい量ですよね。俺もこんなになるとは思ってなかったんですけど、気がついたらこうなってました」
えへへと柳田が笑う。
「これ、本屋よりも本の数多いですよね…」
本好きの颯汰もこの本の多さに興味が湧き、ずらりと並んだ本の背表紙を見ていく。
さすがというタイトルから、パッと見た感じではわからないようなタイトルの本もあるんだ…。
これは?
いたって普通のタイトルの本を蒼汰が手に取ると…。
!!!!
表紙はタイトルから想像もつかないような、濃厚なもので、もう、蕩けた顔の可愛い系の男性が拘束されながら、同時に2人のイケメンに乳首を舐められていて…。
なんだよ、これ!!
颯汰は慌てて本を棚に返すと、
「それ、凄いですよ。シリーズ化されてるんですけど、読まれます?」
嬉しそうにパァーっと顔をほころばせたかと思うと、柳田はごっそりその本のシリーズを取ろうとする。
「いや!!いいです!!それより、初心者向けをお願いします」
全力で颯汰は拒否すると、
「そうですか…。おすすめなんですけどね…」
さっきの嬉しそうな顔が一変。頭を項垂れながら、柳田はしゅんとする。
……。
そんなに凹まなくても…
俺が悪いことしたみたいじゃんか。
「俺、まだ初心者なんで、もう少し慣れてきたらその本、読みますよ」
「ほんとですか!?」
颯汰が言った途端、また嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
やれやれ、本当に柳田先生は…。
ちょっとその笑顔、可愛く思ってしまうよ。
つられて颯汰も微笑んだのが悪かった。
「原先生‼︎BLの勉強、これからもしてくれるんですね‼︎嬉しいです‼︎」
そういうと柳田が颯汰を抱きしめる。
!!!
おいおい!
まずい!
「柳田先生!!離してください!」
颯汰がもがけばもがくほど、柳田は強く抱きしめた。
「俺、腐った友達いなくて…。だから本当に嬉しいです」
颯汰の耳元で話す柳田の声は少し震えている。
「柳田先生…」
たしかに、趣味を共有できる友達がいないのは寂しいよな。
しかもこんなに喜んでもらえるなら…。
「いいですよ、俺でよければ。話ぐらいなら聞けますし」
颯汰は柳田の髪を優しく撫でると、柳田の体がビクンと揺れ抱きしめる腕の力を弱たかと思うと、颯汰に背を向け本棚から本を一冊取り出し、
「こ、これ、濡れ場のない淡い話ですので、読みやすいです…。俺向こうで飲み物の用意してきます」
柳田は颯汰の顔を見ずに、ダイニングに向かった。
??
柳田先生、どうしたんだろう?
俺、変なこと言ったかな?
…。
ま、怒ってなさそうだから、いっか。
颯汰も柳田の後に続いて、ダイニングに向かった。
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