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「殺したんだ…」
えっ,と声にならない声が出る。
「警察にいったの…?」
「いや,黙ってて欲しいんだ」
そんなこと言われても,犯罪は犯罪だ。だから出頭してほしい。…と私が言おうとすると,彼が口を開く。
「愛花(みのか)を殺した犯人を見つけて,つい殺してしまった」
私はさっき言おうと思った言葉を飲み込んだ。仕方ないと思ってしまったから。
愛花の彼氏だった彼なら,いつか犯人を見つけたら殺すことは心のどこかで予想してたから。
「だから,殺したんだ…?」
塾が同じ男子がその言葉を聞いて立ち止まる。さっきの男子とは違う人だ。
電話中,LINEが来た。誰だろうと思い,少し携帯を耳から遠ざけた。
『殺しってなに』
句読点ひとつ無いメッセージを私は見つめた。送り主は私の後ろで立ち止まってる男子だ。
『あんたには関係ない』
最低と思いながら,私は打った。
「なぁ,聞いてる?」
耳に再びスマホを近づけたらそんな声が聞こえた。
「うん,まあ」
曖昧な返事を返して,私は問う。
「警察にはいかないの…?」
「…ああ」
彼が決めたことを反対したことはない。でも,今回は反対しないと。
「でも,それじゃあ愛花を殺した犯人と一緒になっちゃうよ?」
彼はその言葉にごくりと唾を飲み込んだ。
「そうかもしれないけど…」
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