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「着いた」
いくつもの電車を乗り換えて着いた行先。
「ここって」
そう言って私は,見渡す。最近できたばかりの遊園地だ。
「チケット2枚あるけど,行く人いなかったからな」
私はその言葉に微笑む。
「そっか。ていうか,彼女いると思ってた」
「彼女…?いねぇけど」
そかそか。私は笑顔で頷く。
「あっ,早く行こ。時間もったいない」
私はそう言ってジェットコースターの方へと走り出した。
「はやっ」
そんな声が聞こえた。そして続ける。
「沙苗,50メートル走何秒?」
50メートル走は,多分10秒は超えてると思う。
「忘れた」
「10秒超えてるだろ。でも,今めっちゃ早い。真剣に走ったら?」
タイム知ってて聞いたのか。最低っ。でも,今早いって言うのは嬉しい…かな。
「真剣,ね」
私とは縁の遠い言葉だ。何かを《真剣》に取り組んだことはあっただろうか。無い…気がする。
「ああ。で,どこに向かって走ってんだよ」
「そんなの決まってるでしょ。ジェットコースターだよっ」
遊園地って夢の場所。楽しい。
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