ぼくは宇宙船

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ぼくは宇宙船

 まどろむ意識の中、小さな声が侵入してきた。  次第にその声は大きくなり、頭の霧を晴らしていく。 「……ソウルコアの起動、……完了しました」 「……よろしい。……ラディウス215。……わたしの声が聞こえるかね?」 「聞こ……える……?」  投げかけられた言葉に、寝ぼけた頭で反射的に答えた。 「どうやら聞こえているようだな」  意識がはっきりしていくのを感じた。  顔に傷のある男が話しかけているのが見えた。  いや、何か変だ。  見えているのとはちょっと違う。  この感覚はいったい何だろう。  まだ頭がぼんやりとしているのだろうか。  とにかく、顔に傷のある男がそこにいるということは、ちゃんと分かった。 「あなたは誰……? お見舞いにきてくれたの……?」 「お見舞い?」 「あれ、ここは病院じゃない……?」 「こいつは何を言っているんだね?」  顔に傷のある男がもう一人の男に訊ねた。  もう一人の男は作業服を着ていた。 「わ、分かりません。手違いで何かの記憶データが紛れ込んでいたのかも……」 「はっきりしないな。まあいい」  顔に傷のある男は、ぼくに言った。 「ここは病院ではない宇宙船のドッグだ」 「宇宙船……? ドッグ……? どうしてぼくが、そんなところに……?」 「当然であろう。ラディウス215。きみはここで作られた、宇宙船なのだから」 「え……?」  その瞬間自分の記憶ではない記憶が呼び覚まされ、ようやくぼくは自分を認識できた。  軽貨物宇宙船ラディウス。製造番号215。  目が覚めるとぼくは宇宙船だった。  二人の男は、ぼくの操縦席にいたのだった。
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