ぼくは宇宙船

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 数日後、機体の修理が終わった。  ぼくは今、誰もいないドッグにいる。  そのドッグに技術者さんが現れた。  彼は何も言わずに搭乗口を開けてぼくの機内に入った。  つかつかと廊下を歩いて操縦室にやってきた彼は、悲しい顔をしていた。 「やあ、215。今日はお別れの挨拶をしにきた。時間がないから黙って聞いて欲しい」  技術者さんは操縦席に座り、たどたどしく話し始めた。  まるで懺悔でもするかのように。 「なんというか、すまなかったね。きみは飛ぶことが不安だと言っていたのに、ぼくはよく聞きもせず大丈夫だなんて言ってしまった。そのことだけでもちゃんと謝っておきたい。本当にごめん」  技術者さんは静かに頭を下げると、話を続けた。 「ぼくは、きみのソウルコアを書き換えるようにと命令された。  人工頭脳ソウルコアには魂が宿る。そのソウルコアを書き換えるということは、ロボットの魂を破壊することに等しい。それは人間で言えば殺人に匹敵する行為だ。単にプログラムを書き換えるのとはわけが違う。だから実際、ソウルコアの書き換えは銀河法で禁止されている。  でも、この工場ではそれが日常的に行われている。この工場を取り仕切っているやつらは、仕様通りに育たなかったソウルコアをみんな書き換えてしまう。あいつらは、ロボットを金儲けの道具としか思っていないんだ。  ぼくもそれに加担してしまった。脅されて、仕方がなくね……」  辛そうな表情でため息をつきながら、技術者さんは首をさすった。  その首には、何かの機械が取り付けられていた。 「いや、こんなこときみにとっては言い訳にしか聞こえないか。許して欲しいとは言わない。たくさんのロボットを殺してきたことに変わりはないのだから。  でも、それも今日で終わりだ。  残念ながらぼくはそんなに頭がよくないんだ。もちろん力だってない。だからこの方法しか思いつけなかった。きみの意見も聞かずにこんなことするなんて身勝手な話だけれど、悪いけど付き合って欲しい。精一杯の、ぼくのわがままに……。  そろそろ時間だ。  さようなら、215」  それだけ言うと技術者さんはぼくの機内を出て、ドッグから立ち去った。  技術者さんは、ぼくに話をしただけで何もしなかった。  ぼくはまだ、ぼくのまま。  ドッグの中には、静けさだけが響いている。  その時だった。  銀髪の少女が、いつの間にかぼくの前に立っていた。
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