BANKEN番外「冬、来たりなば」

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BANKEN番外「冬、来たりなば」

 この本土よりもやや南方に位置する離島にも、冬が来た。  明け方はさすがに、少し肌寒い。  朝食の準備をしようと温かな布団から潔く起きあがった俺は、その寒さにぶるりと震え、肌が粟立った。  とはいえ、俺の格好にも問題あるんだろうな。  元来、パジャマとか大層なモン着る柄じゃねえ。  下着のみ。タンクトップとトランクス。これが俺の正式な寝間着。  都内では、世話になっていたアニキの言うがままに人には言えない仕事をしていた。いわゆる「ちんぴら」だの「使いっぱ」だのをやっていたのが、俺・緒方堅志朗24歳である。  そのアニキと気まずくなり本土から逃げるように離島にやってきた。寄りにも寄って天敵ともいえるオマワリの居る駐在所に住みつくことになったのは、俺の人生・七不思議の内の一つに数えられる。  駐在所の主・太眉別嬪オマワリさんの石原陸裕さん30歳。石原さんに優しくされて、大好きになって、男を好きになるなんてどうしようなどと思っていたら、石原さんも俺を好きになってくれていました。これは人生七不思議の内の二つ目。
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