俺、F国に左遷されるってよ

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俺、F国に左遷されるってよ

俺は10年前、超体育会系の社風で有名な、日本屈指の建設会社の東京本社に勤めていた。土木エンジニアという肩書の、理想の社畜として。 上下関係の厳しい、ノーを言うことが絶対に許されない抑圧的な職場に居続けた俺は、入社8年目を迎えて、すっかり社畜根性が身についてしまっていた。 たまたま同じ会議に出席した野心家の部長に、課長と共に同席の挨拶をした、という、ただそれだけの理由で、人生を変える白羽の矢が俺にざっくり刺さった。その日に信じられないほど無茶な辞令が下りる。 中央アジアにある小国、F国の国際NGOオフィスがフレッシュな若い土木技師を欲しがっている——会食の席で元外務大臣から聞いて、大臣に恩を売るために俺をF国に出向させようとしたのだ。出向と言うのは聞こえがいいが、本社からの出向は事実上の左遷を意味する。 あまりにハイコンテクストな「おまえ、どうだ?」の一言で俺は中央アジアの聞いたこともない国に飛ばされることになったのだった。 F国が日本では全くと言っていいほど知られていないミステリアスな国だったことと、現地からの返答が最低限だった事が重なって、観光ガイドブック以外の前情報は全くと言っていいほど入ってこなかった。 この、同行者すらいない、たったひとりの出向は、どうポジティブに、いいように見積もっても、不安しかなかった。
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