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そんなこんなで祥たちが合法的に役所婚に漕ぎ着けたのは、最初の結婚式から半年近く経った後だった。
その日はファスナハトという、冬から春にかけてのスイスの祝祭日で、町中が灯籠などのイルミネーションに彩られていた。
「チューリヒ中が僕たちをお祝いしてるね!」とダーチャは無邪気に笑っていて。祥も屈託無く笑うダーチャに心奪われてその場でキスをした。何度も、何度も。
ゲマインデの役所婚は3択だった。「ノーマル」「ロマンチック」「超ロマンチック」。ダーチャの希望で、そのどれでもない「ウルトラハイパー・ロマンチック」になった。
ダーチャの動作のいちいちが超ロマンチックで、熱の籠った目線で見つめたり、ロシア人らしく薔薇を捧げたりとダーチャはノリノリだったが、祥は恥ずかしくて、死にそうだった。最後に誓いのキスをしたときは、あまりにも情熱的だった。真っ赤になって腰を抜かしてしまい、参列者の笑いを誘ったのだった。
三度目の結婚式はツァーリの遺言通り、本物のルツェルンの古城で挙げた。
3月に入ったとは言え、例年にないほどその日は冷えこみ、零下を大きく下回って、ライスシャワーの代わりに雪片が舞い降りていた。ロマンチックな雪化粧に施されたその史跡には、残念なことに暖房の類がない。
ウエディングマーチが反響する礼拝堂で極寒地仕様のダウンジャケットを着込んだ、モコモコ姿の参列者の中央を抜けたのは、スーツ姿のダーチャと祥だった。
ダウンジャケットをガッチリ着込んだ神父の前に立ち、凍える声で愛を誓い合い、悴んだ手でサインをし、冷え切った唇でキスをした。
翌日、ふうふ揃って仲良く風邪を引いたのは言うまでもない。
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