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結婚までの足取りを思い返しながら、チューリヒの二人の邸宅の廊下に二人は抱き合いながら立っていた。祥の肩に頬を埋めているダーチャの髪を、祥は手を伸ばし、愛おしそうに撫でた。
結婚するまではダーチャと細切れに世界に出かけて、旅行先で愛を交わして。
この、うつくしい銀の髪を撫でる日々が終わりを迎えた日が切なくて、離れた後に泣いたけど。
今日も、あしたも、明後日も、
来年も、その先も。
もう二度とパスポートやビザの滞在期限なんて気にせずに、ずっとずっと一緒に暮らせる。
合法的に。永遠に。
頭をあげたダーチャと目があって、どちらからともなく、うっとりとした表情でキスをすると、噛み締めるように呟いた。
「最高の幸せを、ありがとう。」
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