第二章 龍を味方にする3ステップメソッド

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ここで、再び前世の自分である龍神トーシャを呼び出す。 「内なる龍よ、龍と繋がる方法を教えてください!」 「龍繋ぎとはいいだろう。では、しっかりと記録しろよ」 早速メモを取り出す。 「よし、いいか?これは今世の俺に限らず、誰でもできる龍繋ぎだ。3つの段階を踏むことで、誰でも龍と縁結びができるぞ。これをしっかりと世の人に伝えろ」 「了解!」 ・第一段階 龍に興味を持たせる。 「それじゃ、準備はいいか?」 「もちろんです!」 「あと、クオーレも協力してくれ」 「アイアイサー!」 ここから龍と御縁結びを語る。 「まずクオーレ。俺についてきてくれてありがとう。こうして俺の元に龍神様がいるだけすごく助かった」 「何を今更、オイラはトーシャじーさんが生まれ変わる前からずっと見守ってきたゾ。ちょっと照れるナ♪」 自分は、生まれる前からずっとクオーレと一緒だ。しかし、生まれる前からずっと龍と一緒にいる人はごく少数だったりする。これは龍に限らず、天狗や稲荷様などといった霊も同様なことが言える。 「だが、俺みたいに生まれる前から龍がついている人はごく少数派だ。ほとんどの人はどこかのタイミングで龍と出会い、龍と結ばれることになる」 「確かに、オイラの友達も人と結ばれていなかったゾ。今、龍神界では争奪戦が起きているけど、なかなか振り向いてくれないと困っていたゾ」 しかし、人間として生まれ変わってわかったことがある。それは、どうやったら龍にに興味を持たせることができるのかを考えるというものだ。 「そうだな。人間に生まれ変わってからいろいろと気づかされた。クオーレのおかげでもあるが、そもそもほかの龍神からしたら俺はどんなふうに見られているのだろう?」 前世の自分は「やれやれ・・・」とした表情をして語る。 「それは俺の魂が多くの龍に興味を持たせることができただけだ。今回は多くの人々に龍繋ぎをするのが目的だろ」 「あっ、そうだった」 「それじゃ、心して記録を取れ」 メモを取りつつ、前世の自分の話を聞く。 「まずクオーレ。アンタはどんな人だったらおいしいと感じる?」 クオーレに質問を投げかける。 「オイラだったら、トーシャじーさんみたいに躍動感あふれる魂の持ち主だったら食べられるゾ」 「そうか。俺はどちらかというと、縛られず自由に生きている人の魂が好物だったな。個性あふれる感覚派だったら誰でも食べられた」 ここで、ドラゴンが質問に入る。 「アノートーシャサン。ソモソモジャポンノドラゴンハニンゲンノタマシイヲタベルトイイマシタガ、ソノタマシイニモスキキライガアルノデスカ?」 「そりゃそうだ。龍神だって好みはあるからな。ただ、多くの龍は明るくて躍動感のある人の魂が好みだという」 「ソレデハ、ジェミタイニワクワクナソウルノモチヌシガスキデスカ?」 「そうだな。前に言った俺の好みに当てはまる人になるように努める。これが龍繋ぎへの第一歩だ」 「なるほどな。しかし、これだけでは何か物足りない気がする・・・」 「物足りないだと?どこが物足りないのかを答えてくれ!」 困惑する前世の自分。しかし、ここでクオーレが何かをひらめいた。 「わかったゾ!どうしたらワクワクするかということでしょ。トーシャじーさん、神社へ行こうゼ!」 「えっ・・・どこへ行くの?ちょっとまだ前世の俺が・・・」 「そんなの関係ないゾ!トーシャじーさんは、見た目も中身も龍神様♪」 「何が俺をワクワクさせるのかを表現してくれるのか楽しみだ。今世の俺よ、クオーレに答えてやれ」 「えっ、そんな~・・・ってうわあああああ!」 「トーシャじーさんをオイラの背中に乗せるだなんて久しぶりだゾ~♪」 いきなりクオーレの背中に乗せられた。果たしてどこへ導かれるのやら・・・ 「チョット!クオーレサン!オイテイカナイデー!」 「到着♪」 やってきたのは箱根山の頂上にある「箱根元宮」だった。 「ちょっと!誰がここまで俺を導けと言った!?」 「知らないゾ。オイラが行きたかっただけ♪」 シラを切るクオーレ。しかし、箱根ロープウェイを登ってみる景色はもちろん、山頂から見る景色は最高だ。 「ほら、トーシャじーさん。ここだよ~」 どうしてクオーレはこんなに元気でワクワクしているのだろう? 「ちょっと待ってよ~。アンタはひとっ飛びでいいな。ドラゴンも先行っちゃってるし・・・」 「トーシャサン。ハヤククオーレサンノトコロニキテクダサイ!」 言われなくても分かっている!しかし、風が強くて寒い・・・ なんとか箱根元宮に足を運び、参拝する。 迎えに来てくれた神様は、瓊瓊(にに)杵(ぎの)尊(みこと)だ。 「おお、よく登ってきたな。えらいぞ挙母のお使い・・・じゃなかった。トシユキさん」 「ごめんね。クオーレがいきなり俺を乗せてここまで連れていかれてしまった結果、こうなりました」 「面白いな。ここまで来たということは、何か聞きたいことがあるの?」 ここで、あのおまじないを唱える。 「内なる龍よ、我に力を貸してくれ!」 この言葉を聞いた瓊瓊杵尊は驚いた。 「なんだこの呪文は!?トシユキさん・・・えっ!?」 「ふぅ・・・やっとか。ニニギ様に会えたことに御光栄です」 「ちょっと、これトシユキさんなの!?」 「何を言っておる?これはあくまでも仮の姿をした俺だ。ニニギ様が見ているものは俺の前世だ」 一瞬だけ目を疑った瓊瓊杵尊。しかし、同一人物であることは変わりない。 「す、すごい・・・トシユキさんにこんな技を覚えていただなんて驚いたぞ」 ここで、クオーレが瓊瓊杵尊に一言を告げる。 「驚いたでしょ~。これがトーシャじーさんの本当の姿なんダ」 「いやぁまさか本当に龍の生まれ変わりだったのか・・・そうだ。ここで俺に聞きたいことは何かな?」 ここで、前世の自分が瓊瓊杵尊に質問をする。 「今、世間に龍繋ぎを伝えたいからな・・・俺にワクワクするコツを教えてくれないか?」 「なんだ・・・じゃ、ニニギ式ワクワク術を教えよう」 「ありがとう。ニニギ様」 前世の自分も、まだまだ知らない部分が多いようだ。ここは一旦瓊瓊杵尊にお願いしてみる。 「まずはいろいろ手放すことから始めよう。特に、物事に執着している時はワクワクなんかできない。失敗したことに執着したり、過去の栄光に執着していないか?」 いろいろと考えてみたところ、失敗に執着してばかりいたことが多々あった。 「あっ・・・見つかったぞ。いろいろ失敗を繰り返しては落ち込んでいたり、あの時こうしておけばと後悔したり・・・」 「いいか?人生は二輪車と同じく、バックギアが存在しない。つまり、どんな状況だろうとお構いなしに前進することしかできないのだよ。つまり、その時の失敗に目を向け続けたり、今まで通りだからいいやという慢心が思わぬ事故を招く。常に目を正面に向けることを意識すること。そして、将来を見据えて行動すること」 「その時の失敗や、嫌なことに執着しないことだな。ありがとう」 自分にも若干だが思い当たる部分があった。少しでも嫌なことがあると、どうしてもそこに目線を付けてしまうことが多くあった。 「よし、嫌なことに目を向けすぎず、良いことや好きなこと、楽しかったことに目を向けよう。そうすれば、自ずと心からワクワクできるはずだ」 「なるほど!好きなこと、楽しかったことに目を向けるということか!」 「その通り。こうすれば、どんなに嫌なことがあっても、たったひとつの良いことに目線を向けることができれば、嫌なことなんか自然と無視できるようになる。これがニニギ式ワクワク術の第一歩さ」 瓊瓊杵尊は堂々と胸を張った。やっぱり神様はいろいろな人を見てきているわけだから、これは頼もしい答えだ。 その時の失敗や嫌なことにに目を向け続けないこと!そしてよかったこと、楽しかったことに目を向け続けること! 「しかしな・・・」 「???」 「そう簡単に嫌なことから頭が離れる人はあまりいないのも事実だからな・・・職場の上司が嫌味を言ってきたり、店員の対応が悪かったりなど、嫌なことの原因を作っている9割が人間関係だからな」 「あぁ、それすごくわかる。人間として生まれ変わってから、散々な目に遭い続けてきたからな・・・」 いじめ、金銭トラブル、ホームレスなど、今まで散々な出来事を経験してきた自分だから言える。 「だが、よく考えたまえ。お主も含めて、人間は全員完璧ではない。できない人がいるからこそ、優秀な人が目立ってしまうだけだ。この世の人間全員が楽器の演奏がうまかったら、音楽という職業の価値が無くなってしまうからな」 できない人がいるからこそできる人がより目立つ、か・・・ 「ジェハウンドウガニガテデス・・・」 ドラゴンが割って入った。 「要するに確率というわけだ。もし、嫌味を言ってくるような人がいたら、このように流してしまうといいだろう」 「その方法とは何かな?」 前世の自分が首をかしげる。そして、瓊瓊杵尊の答えはこれだ。 「そんなの簡単だ。こう思えばいい。『ほう、その程度の人なんだな』って」 「なんかちょっと生意気な感じがするぞ」 「いいんだよ。嫌味を言ってくる人は、結局のところ自分に自信がないんだよ。その程度で済ませておけば、勝手に離れていくから、嫌味を言ってくる人の言動を徹底的に無視しておけばいい」 もし嫌味を言ってくる人が近くにいたら「所詮、その程度の人か・・・」と受け流す心構えを持つ。 「そうそう、オイラもちょっと観察していたけど、そういう人に限って魂レベルがものすごく低いことが多かったゾ。もちろんトーシャじーさんを産んだ母親の魂は罰ゲーム級の味だったけど・・・」 おいおい、母親は別だろ。なんで味見なんかしているんだよと突っ込みたくなるが、ここは抑えておこう。 「最後にこれができたら、もう楽しいことに集中できるようになる」 「それは何かな?」 「好きなことを増やすこと。楽しいことにハマると、夢中になったりしないかね?」 「確かに、気が付いたら没頭していることが何度かある。楽しいことをやると、時間を忘れてしまうな」 前世の自分が納得した表情を見せている。今世の自分もちょっと安心した。 「そう、好きなことが増えると、面白いことに人生が充実していく。好きな人を作る、大好物をいっぱい食べる、好みの服を着るなど、小さなことでいいから、とにかく自分の『好き』を見つける冒険に出て、人生を充実させてみなよ」 「わかった。俺の好きなものは・・・」 好みを増やしてワクワクを充実させると、龍が寄ってくるようになる! 「これでニニギ式ワクワク術はおしまい!あとはお主の行動次第だ。また何か困りごとがあったら、挙母神社に来なさい」 「ありがとう、ニニギ殿」 瓊瓊杵尊からワクワク術を教わった前世の自分は、ひとまず納得してくれた。あとは・・・ 「トーシャじーさん?」 「あっ!えっと・・・あれ?ニニギ様は何か言ってたかな?」 我に返り、今世の自分は一体何をしていたのかさっぱりわからなかった。 ・第二段階 龍を呼び込む 箱根元宮からの帰り道。 「クオーレ。ニニギ様が言っていたワクワク術、前世の俺は納得してくれたかな?」 「ふふふっ♪そうと言ったらそうだゾ。トーシャじーさんが納得してくれたら、それでいいんじゃないかなぁ~?」 「内なる龍よ、ちゃんとニニギ様の言っていたことを腹に収めることができたか?」 「は、腹に収めるとはどういう意味だ?」 「要するに、納得したかどうかだ。それを聞きたい」 「そうか、俺と来世の俺は一心同体だからな。ニニギが言っていたことはその通りだ。これでワクワクする術を学ぶことができた。で、これから俺に言いたいことは何だ?」 次のネタが全然頭に入っていなかったため、何を言いたいのかわからなかった。 「えっと、ニニギ様の言ったことは、ちゃんと龍に興味を持たせることができるのかな?」 「そ、それはもちろんだ。ワクワクして弾んだ魂が俺の好物だったからな。これができる人を常に探している。アンタだってそうだろ」 「そうですよ。ワクワクしていると、どうしても夢中になるね」 龍に興味を持たせたかったら、まず楽しいを表現することから始めるということだ。で、次は・・・ 帰宅後、あることに気づく。 「ねぇクオーレ。ただ龍に興味を持たせただけでは寄ってこないよね。どうすればその人に龍が寄ってくるかな?」 クオーレに質問をする。 「トーシャじーさんならオイラをどのように呼ぶかな?」 「えっと、クオーレって呼ぶけど・・・」 「そうだゾ。オイラはトーシャじーさんを守る金龍クオーレだゾ。このように名前を付けてあげることが大事じゃないカッ?だって、高龗様が言ってたモン!」 以前に伊奈波神社の摂社、黒龍神社に訪れた際、ここにいる高龗神から「せっかくだからその金龍に名前を付けてあげたらどうだ?」と言われたことがある。その際に仕事中ではあったが「クオーレ」という名前が思いついたのだった。 「なるほど、これなら単純明快ね。名前を付けるということで、愛着が湧いたりするし、その人を守る龍にもなってくれるよね」 「もちろんだゾ!オイラ、クオーレという名前、すごく気に入っているモン♪」 もし、龍神を呼びたいと思ったら、まず名前を付けてあげることを意識してみるといいだろう。基本的にどんな名前でも構わない。自分好みの名前を付けてあげることで、その人を守る龍神になる。 「ところで、俺はいつからトーシャって呼ばれるようになったのかな?」 「オイラは知らないゾ。ただ、九頭龍様の右腕として勤めていた立派な老龍の名前がそれだっただけだゾ」 どうやら自分にはいつトーシャと命名されたのは分からないらしい。一体自分はどんな龍神だったのだろうか? 「ところでトーシャじーさん。オイラが連れてきたフランスの龍神に名前は付けないの?ずっとドラゴンとしか言っていないけど・・・」 「あ、あれはドラゴンでいいんだよ。西洋のドラゴンというイメージしか湧いてこなかったからな」 この言葉に対して、ドラゴンが反応した。 「トーシャサン、ジェノメイメイガソノママダナンテ・・・」 「ごめーん!許して~」 ドラゴンが少ししょんぼりとした表情をしていた。 名前を付けて呼んであげるべし!その名前があなたを守る龍神様になる。 第三段階 龍と仲良くなる 「そ、そんなに落ち込まないでよ。ドラゴンはドラゴンでかっこいいし、モテモテにだよ」 ドラゴンを必死に励ます。 「ウゥ・・・トーシャサン・・・ジェトナカヨクシテイキタイノニ・・・」 「あっ、そうだな。龍と仲良くなるには・・・」 そうだ。龍と仲良くなるとどうなるのか、少し気になったので前世の自分を呼び出す。 「内なる龍よ、我に力を貸してくれ!」 前世の自分に、龍と仲良くなるとどうなるのかを聞いてみることにした。 「どうした?今世の俺よ」 「龍と仲良くなるとどうなるの?」 「なんだ、そのことが聞きたかったのか・・・いいだろう。しっかりと世の人に伝えろよ」 早速メモを取る。 「まず、龍神の身になってくれ。いきなりその人について仲良くなろうと思わないはずだ。アンタもそうだろ。どんな人なのか全然わからないのにいきなり仲良くなりたいとは思わないだろ?」 「そうだよ。これで何度も騙されているわけだし・・・」 「龍神だって、その人の魂を食べてから判断したいのだよ。魂を食べた後、その人の様子を伺うのが鉄則だ。魂を食われた人にはいろいろな幸運が降り注いでくるが、それを『なんだ、気のせいか』と思われたら悲しいぞ。今世の俺よ、龍だった頃の俺は何人もの魂を食べてきたが、ほとんどの人は全然気づかないばかりで最悪だった。今世の俺にもキッチリ前世の影響が残っているのはそのためだ」 前世の事情を語り続ける自分。 「はぁ・・・だから今も昔も人間関係に苦労しているということか・・・今も昔も人に恵まれなくて寂しい思いをしているのはつらいよ」 「仕方ないだろ。それは自分自身でこの環境を選んだから文句言うな。で、龍と仲良くなりたかったら、まずはお互いに尊重することが大事だ。それを今からクオーレとドラゴンと一緒に実演してもらうとしよう」 「あっ、いきなり実演だなんてどうして?」 「今世の俺が生身でやったほうが分かりやすいだろ。せっかく人の身体を借りているわけだから、存分に使わせてもらおう」 ここにきて前世の自分が人体実験を要求してきた。以前にもクオーレから人体実験をさせられたことがあったのだが、今回は前世の自分だ。しかも、クオーレとドラゴンも巻き込む大規模な実験になりそうだ。 「はぁ・・・わかった。トーシャ、俺の身体を好きなだけ使いな」 ‣人体実験1 もしもある時に龍の気配を感じたら 翌朝、クオーレとドラゴンに協力を要請し、龍神様が人に付くとどうなるのかを人体実験で検証することにした。 「トーシャじーさんの人体実験なんていつ以来だろう?」 「今回の実験は前世の自分からの提案によるものだ。クオーレ、ドラゴン、実験に協力してくれ。結果を世に広げたいからな」 「トーシャサン、ハラヘッタ・・・ゴハンタベタイ・・・」 「ドラゴンよ、実験には腹を空かせている状態じゃないとうまくいかないゾ。ちょっと我慢してネ」 「ソンナ、クオーレサン・・・ジェハモウゲンカイデス・・・」 どういうわけだか、ドラゴンは何も食べていないようだ。 「というわけで、トーシャじーさん。オイラがドラゴンと一緒にあることをするから、ここに行ってネ。その道中で何かしらの合図を出すから、よーく観察するんだゾ」 と言ってドラゴンを引き連れてどこかへ行ってしまった。 ということで、クオーレの指示に従い、ある場所に向かう。 「ここって言ってたけど、何が起こるのかな?」 向かった先は蒲郡市にある八百富神社だ。 この神社は、竹島一帯が境内となっており、とにかく長い橋を歩き渡っていくことで有名であり、愛知県の龍神と言えば、この神社を指すことが多い。 自動車は残念ながら故障し、そのまま廃車となったため、電車で行くことにした。コロナウイルスが蔓延している中でのお参りは正直怖い。 「久しぶりだな。いつ以来だろう?」 そう思って長い橋を渡ると・・・ 「すごい風だな。ん?何か変な声が聞こえるような気がする・・・」 この時、何かを感じた。明らかに何かが呼んでいるような気配がする。 桟橋の上で空を見上げると・・・ 「おお。これは明らかな龍の雲じゃないか。すごい・・・きっと龍が俺を呼んでいるのだな」 ハッキリとした龍の形をした雲を見て、なんとなく龍に呼ばれているなと思った。 本殿に参拝をし、ついでに奥にある八大龍神社にもお参りする。 この時、八大龍神社に祀られている龍神様から「おみくじを引いていけ」と言われたので引いてみることにした。 ここのおみくじは「大大大吉」が出ることがあるらしく、結果はどうなるのかワクワクしてきた。 果たして結果は・・・ 「第八十八番・・・吉・・・か。どれどれ・・・ん?」 ここであることに気が付いた。 「数字の8って、確か龍の・・・」 これは偶然だろうか、何かが自分に取り付こうとしている。 おみくじを引いたところで、そのまま八百富神社を後にする。 実はその時。八百富神社上空ではというと・・・ 「ドラゴン頑張れー!大きい翼をトーシャじーさんに向かってはばたかせるのダ!」 「ハァ・・・ハァ・・・クオーレサン。ジェハハラガヘッテチカラガデマセン」 クオーレとドラゴンが人体実験のためにわざわざ仕掛けていたのだった。 「ああもう!これじゃトーシャじーさんが振り向いてくれないゾ。仲良くなりたいならもっと羽ばたくんだゾ!」 「グオオオオ!トーシャサンノタメナラガンバル!」 ドラゴンが必死になって羽ばたいている。その時・・・ 「あっ!トーシャじーさんが上を向き始めたゾ!ここはオイラの出番だゾ!」 瞬く間に雲へ向かったクオーレ。颯爽と雲の形を龍に仕上げる。 「ふぅ・・・これでトーシャじーさんは気づくはずだゾ。ドラゴンもよくやったゾ」 「ハァ、ハァ、クオーレサン。モウダメ・・・」 空腹のあまりに力が尽きてしまったドラゴン。ここでクオーレの元に、八大龍神社にいる龍神様がやってきた。 「何をしている?そこの子龍」 「あっ、こっ、子龍じゃないゾ。オイラはクオーレだゾ」 「元気そうだな。ワシはここを守る龍神だ。ここでどんな遊びをしているのかな?」 「あっ、これは人体実験だゾ。トーシャじーさんの」 「トーシャ?どこかで聞いたことあるような名前だな。そいつはどこにいる?」 「多分どこかで参拝しているゾ」 そう言って八百富神社へと向かっていった。 しばらくすると、八大龍神社に誰かがいる。 「誰だ?この青年は?」 その青年を見た龍神様は、何を感じ取ったのだろうか、目をじっと凝らして見ていた様子だった。 「おい、そこの幼い金龍。この人、なんか龍みたいな顔をしているぞ。この人に何を伝えたらいい?」 クオーレが駆けつけると・・・ 「あっ!トーシャじーさんダ!えっと・・・とりあえずおみくじをひかせて。数字の8が出るように仕掛けておくんだゾ」 こうして八大龍神社の龍神様が「おみくじを引いていけ」と伝えたのだった。 再び上空に戻った後、ドラゴンと合流し、自分の元へと向かったのだった。 龍神と仲良くなるための第一歩。それは、龍神が発する印に気づいてあげることだ。 ‣人体実験2 もしも龍に自分の魂を食べられたら 人体実験はまだ続く。 八百富神社の桟橋を渡り終えた先にある遥拝所で、クオーレとドラゴンが迎えに来てくれた。 「なるほど・・・これが龍が発する印なのね。クオーレ、ご苦労さん」 「ありがとう。だけど、まだまだ人体実験は終わらないゾ」 「次は何をするの?」 「トーシャサン・・・モウゲンカイデス・・・ハラガヘッテモウウゴケマセン・・・」 ずっと食べていなかったドラゴンに、褒美として何かを食べさせようと思ったその時・・・ 「ドラゴン、よく頑張ったゾ。せっかくだからトーシャじーさんの魂を食べてみないカッ?」 「トーシャサンノタマシイヲタベルノデスカ?ジェハシゼンレイノタマシイヲタベルケド、ナマミノヒトノタマシイヲタベルノハイヤデス・・・」 「何言っているのカッ?もう限界じゃないのカッ?トーシャじーさんの魂は最高にウマいゾ。ほら、一口。あーんしてネ♪」 「クオーレ、ちょっと待て。まだ準備ができてない。それに、ドラゴンに俺の魂を食わせるって無理させってうわなにをすくぁwせdrftgyふじこlp!」 半ばドラゴンに魂を食べさせられる。これも人体実験のひとつなのか! 「ムッ・・・?コノアジハ・・・」 「どう?普段からオイラはこんなものを食べているんだゾ」 「デリッシュ!サイコーデス!クオーレサンハイイナ・・・ジェモトーシャサンノタマシイヲタベル!」 そう言ってくれるとちょっと嬉しい。 「どんどん食べていきなよ。アンタの腹が喜ぶぞ」 「メルシー!トーシャサン、イタダキマス!」 「オイラも食べるゾ!ってちょっと、ドラゴン食べすぎだゾ!オイラの分が無くなっちゃう!」 とにかく魂を食べまくるクオーレとドラゴン。満腹にさせておいたところで、帰路についた。 翌朝。ニュースを見ると・・・ 「特定給付金10万円分。マイナンバーカードを持っている人限定でオンライン申請が可能に。受付は4月27日より開始。最短で2週間程度で給付されるだと?」 朗報が入ってきた。そう、新型コロナウイルスによる非常事態宣言が発動され、国民に一律で10万円が給付されることが決まったのだった。 申請方法は郵送申請とオンライン申請の2種類だったのだが、郵送申請は6月より随時発送されるのに対し、オンライン申請はかなり早い段階で申請ができるのだった。 「マイナンバーカード所持者限定か・・・ってあれ?確か・・・」 実は、2月に個人事業主として立ち上げる直前に、個人番号カードの発行を申請していた。3月にカードが手元に届いたため、このタイミングでは所持していたのだ。 「もしかして、先に申請できるのか!やったぜ!」 あの時に発行していなかったら、3ヶ月待つことになっていたであろう。 「クオーレ、ありがとう。助けられたよ」 クオーレに感謝したところ、こんな答えを言ってきた。 「トーシャじーさん。感覚が鋭くなったような気がするゾ。オイラとドラゴンが魂を食べた結果、その人の感覚が鋭くなるんダ。面白いでしょ?」 「そ、そうなんだ。確かに、直感力がいつもより鋭くなった気がする」 「そのために人体実験をしているじゃないカッ。わざわざドラゴンの腹を空かせておいたのはこのためなんだゾ」 「えっ・・・なんか、ドラゴンに申し訳ないな」 龍に魂を食べられると、直感力やひらめき、さらには行動力が上がる。 「あと、魂を食べられた直後に起こる現象として、眠くなることが挙げられるゾ。トーシャじーさん、家に帰った直後に布団へ向かってそのままグースカピーだったもん」 「あっ・・・そういえば家に帰る直前にものすごい眠気が襲ってきて、そのまま布団に入ったらあっという間に寝てしまったな。しかも心地よかったぞ♪これも食べられたとされる証拠なのね」 もし、神社に参拝をした後や滝行をした後などに心地よい眠気が来た場合、龍に魂を食べられた可能性が高いでしょう。この後に直観が冴えたり、ひらめきが湧いてきたりした場合は、もうあなたの近くに龍がいると思っていいでしょう。自信を持って、龍と接してあげてください。 「ぐぅ~」 「あっ・・・」 そうだ。まだ朝ごはんを食べていなかった。 「トーシャじーさん。朝ご飯食べようゼ」 「そうだな。ちょっと作ろう。で、ドラゴンは・・・」 「zzz・・・zzz・・・」 よほど食べていたのだろうか、ドラゴンは膨れ上がった腹をさすり、幸せそうな顔をして眠っていた。 突然心地良い眠気が来たら、龍があなたの魂を食べてくれた証拠。少しだけでもいいので眠ってみよう。直感力やひらめき力が上がって周りに貢献できたら、龍は喜んでくれる。 ‣人体実験3 もしもやたらと都合が良くなってきたら 食事中、気になることが1点だけあった。 「いやぁあの時マイナンバーカードを作っておいてよかった。こんな都合よく10万円が誰よりも早く手に入るなんて思っていなかったぞ」 実は、新型コロナウイルスによる影響で失業したのをきっかけに、様々な災難を受け続けていたのだった。もう会社勤めは根本的に向いていないと感じたため、フリーランスとして開業届を出していた。 その際に、確定申告で必要となるマイナンバーカードを同時に作っていたのだった。 まさかこのタイミングで良いことが起こるとは・・・ 「ボンジュール。トーシャサン。キノウハメルシー」 ドラゴンが起きた。 「おはよう。なんか随分と食べてくれたみたいだな。死ぬかと思うくらいの眠気に襲われたぞ。朝ご飯できているから食べて」 「マダハラガスカナイデス。コンナニハラモチガイイタマシイヲタベラレテシアワセデス」 「おいおい、朝ご飯は大事だぞ。しっかり食べて、力をつけなさい」 ということで、ドラゴンも朝食を取り始める。 「トーシャサン。イイコトオシエマス」 「どうした急に?」 「ジェモナニカヤクニタチタイトオモイ、トーシャサンニプレゼントヲオクリマシタ。オキタトキ、デイリーニュースヲミマセンデシタカ?」 「あれか・・・で、ドラゴンは何をしたの?」 「スグニシンセイデキルヨウニシカケタノデス。ジェモクオーレサントハスガタハチガウケド、オナジドラゴントシテノハタラキヲミセタイトオモイ、ガンバリマシタ」 「ドラゴン・・・あの時の様子を見ていたのか?」 ドラゴンもやる時はやる。フランスから来たとはいえ、立派な龍を目指す姿は勇ましさを感じる。 「モチロンデス。コノヨウニ、ツゴウガヨクナリハジメタラ、ドラゴンノオンケイヲウケテイルショウコデス」 「ありがとう。これって誰かから教えてもらったの?」 ドラゴンがこんな知識を持っているとは思えない。一体誰に教わったのだろうか? 「コレハ、マダジャポンニクルマエニナカマカラオソワリマシタ。イマハモウヤラレチャッタケド・・・」 そうか、一応ドラゴンにも仲間がいたのか。今はクオーレと一緒に過ごしているのだが、ドラゴンにもそんな知識を教わっていたとは思っていなかった。 そんな感じで、朝ご飯を食べ終わった。 「ごちそうさまです」 「トーシャサンノタマシイ・・・オイシイナ」 「ちょっと!オイラの分が無くなっちゃう!もう・・・ドラゴンは食いしん坊なんだゾ」 こうして、東洋龍と西洋龍による魂の奪い合いが始まったのだった。 タイミングが良くなり始めたら、龍が仕事をしている証拠。働いてくれた龍に感謝をしよう! ‣人体実験4 もしも周りの環境が変わり始めたら 魂が無くなってしまうほど食べられたため、その日は動けなかった。 しかし、人体実験によって多くの現象が起きたため、身をもって体験したことに満足していたのだった。 布団の上で横たわるドラゴン。クオーレを抱えて何をしているのだろうか? 多分もう聞く耳を持たなさそうな様子だったので、仕方なく前世の自分に報告することとした。 報告した時の様子がこちら。 「おお~これだよ。まさに龍と繋がった時の様子じゃないか。人になった今じゃなかったら体験できなかったぞ」 満足気になっていた。実験は大成功だった。 「ところで、人体実験をしてからかなり取り巻きが変わり始めた。特にツイッターのフォロワーが神様関係の人ばかり見るようになったけど・・・」 「おう!こうして環境が変わった、人間関係に変化が起きたとなれば、自己成長している証拠だ。ドラゴンに魂を食われただろ。このタイミングで、今世の俺は龍と関わる人に目線が向き始めたのだよ」 最近、やたらと龍と関わる機会が増えた。ツイッターのフォロワーも龍関係の人が集まるようになっていたのだ。 「そうだな。やたらと龍に関係する人ばかりが集まってくる。これは何かのサイン?」 「それもそうだが、重要なところはここじゃない。もっと別のところに影響を及ぼす」 「え?どこなの?」 「どこって、その人の成長度合によって付き合う人が変わることだ。その人のステージに合わせて相応しい人を案内するのが、龍の役目だ。なんにせよ、九頭龍大神がよく言っていたもんだ。『相手は自分の鏡』とな」 「相手は自分の鏡?」 「そうだ。自分のやったことは必ずどこかで自分に返ってくる。良いことも悪いこともだ。今世の俺は今まで何をしてきたのか、今のうちによく振り返っておけよ」 周囲の人間関係は、実際のところ自分から作り上げたものだと前世の自分は言う。 その後、今までの自分がどんな行動をし、周りの人々に様々な影響を与えてきたのかを振り返り、反省したのだった。 「あぁ・・・思えばとんでもないことをしてきたのか・・・誰も喜ばせることができず、気が付いたら孤立。どんなオチなんだろう・・・」 悔しさに涙をこぼし、猛省していた時、前世の自分が諭す。 「仕方ないだろ。だけどな、生きている間はいくらでもやり直せる。反省したら、どうやったらうまく人間関係を築き上げることができるのかを研究しなさい。どんなに失敗しても、めげずに前に進む人は本当に強いからな。その人の魂の味はどれほどおいしかったのか、今でも思い出すなぁ~」 「類は友を呼ぶ」というように、周りの人間関係を作り上げたのは自分自身であることを自覚する。 付き合う人が変わることは、自分の成長を助けてくれる人が現れた証拠。新しい人間関係を楽しんで付き合うことで、龍にとって御馳走となる。 このタイミングで、九頭龍大神の指導を思い出す。 「そうだ。九頭龍様の指導が約に立つんだった。その指導を思い出しつつ、人間関係を再構築していこう」 これにて、人体実験は成功し、満足したのだった。 「ドラゴンは温かいナ。もっと西洋の龍ともっと仲良くなりたいゾ!」 「クオーレサンミタイニ、ジューニナリタイデス。ジャポンノドラゴントシュギョウシヨウ」 本当に仲がいいな。うちの東洋と西洋の龍は。
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