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プロローグ
むか~しむかし、九つの頭を持つ龍神が戸隠の山に住んでいた。
その龍神は、龍の親として偉大なる力を持ち、龍を育て、龍を指揮し、龍を守る存在だった。
そんな中、九つの頭を持つ龍神様の右腕として仕えていた1柱の老龍がいた。
その龍は「トーシャ」と名乗っていたそうだ。
この老龍は、かつて多くの神様と交流し、多くの人々を災いから守り、数多くの恵みを分け与えた凄腕の老龍だった。ある天皇陛下の守護もしていたらしい。
その腕前から、多くの龍神様から好評を得て、晩年は若い龍神様に支えられながら豊かな暮らしを謳歌していたようだ。
しかし、トーシャの死は龍神界で瞬く間に広がり、多くの龍神様が悲しみにくれていた。
その様子を見ていた九つの頭を持つ龍神様は、ある幼い金龍に望みを託し、トーシャの御霊をある人の形代に入れたのだった。
時が経ち、現代の日本。
幼い金龍は、老龍トーシャの生まれ変わりである人物のそばにいた。
幼い金龍は、老龍トーシャの生まれ変わりに何度も交信していたが、なかなか気づいてくれないことに苛立ちを見せていた。
ある日、幼い金龍は九つの頭を持つ龍神様からある助言をもらい、老龍トーシャの生まれ変わりを戸隠山へ導くように仕掛けた。
その結果、老龍トーシャの生まれ変わりは戸隠神社九頭龍社で御祈祷をしたことにより、老龍トーシャの生まれ変わりの出生地である産土神社で幼い金龍の存在に気づいてくれた。
この作戦が功を奏し、幼い金龍は大喜び。
全国の神社を一緒に回りたいと促し、今も老龍トーシャの生まれ変わりと一緒に過ごしているのだった。
「ちょっと、これはデタラメだろ!」
その人の名は「林 俊幸」だ。今回の主人公であり、なおかつ本書の著者である。
「トーシャじーさんの経歴はこうだったゾ!これは紛れもない事実だもん!」
幼い金龍の名前は「クオーレ」だ。京都の龍神様からもらったアドバイスをもとに名付けた。
「クオーレ、俺が龍として生きていた時の経歴を全部知っているのか?」
「そ、それは・・・」
「それは?」
「知らないゾ!」
「ズドーン!」
思いっきりズッコケてしまった。
「なんだよ!知らないんかい!」
「だって、オイラはまだ5歳だもん!トーシャじーさんのことは九頭龍様を通さないと分からないもん!」
クオーレは自称5歳と言っているが、実際のところ600年以上生きており、人から見ればかなり長生きしているようにみえる。
「もう・・・仕方ない子だな。それじゃ、龍の存在をみんなに知ってもらえるよう、俺から語らせてもらうぞ。クオーレ、前に言ったよな。一緒に世界を作ろうって」
「確かに言ったゾ。その約束ぐらい覚えているゾ」
そう、これは以前に九頭龍大神から受けた最後の指導だ。
その指導とは、自分の世界は自分で作るというもので、一生をかけてやれと言われ、これをクリアしない限り、自分は龍神様に戻れないと言われたのであった。
自分の前世は龍だったというのは、多くの神様に指摘されているからだ。とくに九頭大龍神からそのように言われたときは、驚きを隠せなかった。
「しかし・・・問題はいくら俺の前世が龍だったとはいえ、生まれ変わった時に龍として活躍していた記憶はすべて忘れてしまったからな。龍の存在をどのように伝えるか・・・」
そう悩んでいると、クオーレが「エッヘン!」という態度を示した。
「任せなさいトーシャじーさん!オイラはまだ子供だけど現役の金龍だゾ!オイラと一緒に龍の存在を知ってもらうことができたら嬉しいゾ!」
これは助かる!
「ありがとう、クオーレ」
「トーシャじーさん。オイラと一緒に龍の存在を広めようゼ!」
こうして九頭龍大神の最終指導の一環として、早速クオーレと一緒に龍の存在を知ってもらうための活動に入ったのだった。
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