4人が本棚に入れています
本棚に追加
「神様お願いします! もうすぐ30歳になるのに今まで彼氏が一人もできませんでした! このままじゃ結婚して子供3人作って幸せな家庭を築くっていう小さい頃からの夢を叶えられません。どうか私が結婚できるようにしてください!」
「よかろう。お前の願いは我が叶えてやる。その代わり我の願いはお前が叶えるのだ」
突然目の前に美しいイケメンが現れた。
腰まで長い銀の髪に菫色の瞳。
この神々しさからいって彼が神様なのは間違いない。
神様の願いはきっととても恐ろしいものだろう。
けれど結婚できるのならなんでもやる覚悟だ。
「わかりました! どんなことでもやらせていただく覚悟です!」
「よかろう。なら、これを作るのだ!」
神様は料理本を両手で開き、オムライスが載っているページを見せる。
「あの、オムライスを作ったらいいんですか?」
「ああ、そうだ。これを作るのだ!」
もっととんでもないことを要求されるのだと思っていたが、ただ料理を作ってほしいということだったのでほっとした。
彼氏すらいない私だが、いつでも結婚できるように花嫁修業はバッチリやってきた。
旦那のどんな好みにも答えられるように和食洋食から中華イタリアンまでだいたい作れるので料理は得意である。
「わかりました! 任せてくたさい!」
あれから1年、神様の望みに答えて毎日のように料理を作った。
私の料理は神様の口に合うようで、喜んで食べてくれる。
あまりに美味しそうに食べてくれるので、私も彼に料理を食べて貰うのが1つの楽しみになっていた。
だけど来週、30歳になる誕生日がやってくるのに一向に願いが叶わない。
私の前に結婚どころか恋人になってくれる男性すらやってこないのだ。
目標が30歳までに結婚することなので、神様にいつ願いが叶うのか尋ねなければならない。
「おお、すまない。お前の飯があまりに美味しくてな、つい忘れておった」
まさかとは思っていたけど、やっぱり忘れていたようだ。
神様といえど万能ではないようだ。
人間のような失敗をしたところに親近感を覚える。
「なら、私の願いを叶えてくれるんですね」
「うむ、我は1度約束したことは守る主義であるからな。さて、お前はどのような男と結婚したいのだ?」
そう問われて、何も思い浮かばなかった。
とりあえず結婚して子供を作って幸せな家庭を築きたいと思っていたので、相手に対しては特に何も考えていなかった。
「いえ、特に好みはないので、子供を作れる健康な男であれば誰でもいいです」
「そうかそうか。それならお前とは我が結婚しよう」
神様からプロポーズされるとは思っていなかったので驚いた。
「今までの恩を返すために好みの相手がいれば理想の男を用意しようと思っていた。だがお前が結婚すると今までのように料理を食べられなくなる。それなら我がお前と結婚しようというわけだ。どうだ? 我では不服とは言わせぬぞ」
料理を食べたいという理由で結婚していいのだろうかと思ったが、男なら誰でもいいという私も大概なので人のことは言えない。
1年間長い時間を過ごす中で、偉そうな態度とは裏腹に彼がとても優しい人だとわかっていた。
彼なら子供にとっていい父親になるだろう。
「はい、よろしくお願いします!」
頭を下げると、神様は満足そうにうむと頷いた。
神様との夫婦生活はとても幸せなものとなった。
子供は5人もできたので毎日騒がしいがとても楽しい日々を送っている。
人間と神様では常識が違うのですれ違うことは何度もあって、たまに喧嘩することはあったがすぐにどちらかが謝って仲直りをすることができた。
幼い頃両親に捨てられてずっと寂しい思いをしてきた。
けれど神様のお陰で今はとても楽しくて充実した生活を送っている。
あの日ダメ元で神社にお願いをしてよかった。
そういえば小さい頃に1度だけ神社にお参りしたことがある。
それからなぜか男性に避けられるようになった気がするけれど、気のせいだよね?
最初のコメントを投稿しよう!