第1話 ある春の日に

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第1話 ある春の日に

 高校生活の訪れを歓迎しているかのように今年の桜は4月に満開になった。高校ではどんな生活が待っているんだろう?誰しもが抱く疑問を抱えながら人混みの中を歩いていく。しかし次の瞬間、俺の人生は大きく動いた。   校門のそばに立つ一人の少女に俺は心を奪われていた。彼女は外から続々とやってくる新入生にビラを配りながら元気よく話しかけている。彼女は本当に綺麗だった。どんな言葉でも表しきれないほどの美しさだ。俺はぼんやりと見惚れながら、人の流れにそってゆっくりと彼女に近づいていく。 「新しく設立したよさこい部です。興味がある人はぜひ見学に来てください!」  俺に声をかけてきた。緊張と気恥ずかしさで心臓の鼓動が激しくなる。さらに彼女が近づいてくると時間がスローモーションのようにゆっくり流れているように感じた。絹のような髪と澄んだ白い肌が桜の花びらのようにふんわりと揺れ動く。近くで見るとより魅力的だ。そして、俺は1枚の紙を受け取る。彼女は希望に満ち溢れたように煌びやかな表情で、 「私と一緒に踊ってくれませんか?」    いきなり誘うような言葉。一気に顔が熱くなる。俺は返事をしようとしたが、のどが乾ききって何も言うことができなかった。  人混みに流されて彼女から遠ざかっていく。後ろを振り向くと、彼女は満面の笑顔で俺に手を振っていた。俺は手渡されたビラに目を落とす。 ーよさこい部新設につき、部員大募集!ー   あなたも本場高知でよさこいを踊ってみませんか? 「よさこい、か……」  俺は丁寧にビラを見ながら校舎に入っていった。  
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