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私は、ベッドの上で目を覚ました。
「あれ…。ここは…」
私が呟くと閉まっていたカーテンが開き、養護教諭の水野先生と数人の図書委員の生徒が驚いた表情でベッドのそばに駆け寄ってきた。
「詩希さ…」
「詩希先輩、よかったぁ!」
先生の声かけよりも先に二年生の菅原さんの明るい声が響いて、彼女は体を起こした私に抱きついてきた。
「菅原さん…。水野先生がいるってことは、保健室?…というか、なんで千葉くんがいるの?」
抱きついたまま泣き始めた菅原さんの背中をさすり目を丸くしながら、私は水野先生のとなりに安心したように立っていた一年生の千葉くんを見た。
「…覚えていないの?」
水野先生は私の目線に合わせるようにしゃがんで聞いてきたけど、すぐに状況を理解することはできなかった。先生の質問に頷くと、先生は表情を暗くした。
「……詩希さん。あなたは、図書室の階段から落ちたの」
「えっ…?」
先生の答えを聞いても驚きを隠せなかった。頭が混乱しているのだろうか。
「今日、僕と先輩が当番だったじゃないですか。そのとき、二階の本棚に戻す本が数冊あって…、その作業を先輩がやることになって……」
「あっ、その作業で階段を上ってたときにつまづいたんだ」
千葉くんが戸惑いながらも状況を話してくれたことで、私は思い出していた。
そして、そのときに私が考えていたことも。
「さっきまで、阿部先生と担任の杉田先生もいたんだけど、保護者の方に連絡するって言って職員室に行ったからね。足は痛んでいないようだし目も覚めたけど、帰ったら病院に行きなさいよ」
「…わかりました。ありがとうございます」
疲れた様子で立って背を向けた先生に返事をすると、先生は泣きそうな表情で振り返った。先生の様子を見た私は、先生が本当にずっと私を心配していたことに初めて気づいて、すごく申し訳ない気持ちになった。
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