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私と千葉くんが図書室に入ると、まだだれも来ていなかった。
「まだだれも来てないね」
「みんな、クラスとか部活のほうが忙しいのかもしれないです」
電気をつけて周りを見回しながら、私たちは静かな図書室の椅子に座った。向き合って座った私たちに少し沈黙が続いたけれど、私はある質問を千葉くんにすることにした。
「千葉くん。さっき、私のおかげだって言ってたけど、あれはどうして…?」
「えぇっと…。僕は、部活で憧れの同級生に追いつけなくて部活も楽しくなくなってやめようと思ってました。そんなときに、先輩は僕が気にした本を読んでみたらってすすめてくれた。それに、委員会の仕事もすごく丁寧に教えてくれた」
「それで、私のおかげ…?」
「はい。実は先輩がすすめてくれたあの本を借りたのはその彼で、一緒にロングライドとかロードレースに参加して、いい結果を出せました」
「…そっか。それなら、よかった」
嬉しそうに笑う千葉くんを見て、私は安心したと同時に悔しくなった。自分の思いを全部はっきり言えない自分が置いていかれるような気がしたのだ。
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