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「このままここにいたら、俺、手だすよ。何もしないなんて無理だよ。だから」
「帰ら、……ないで」
遮るように言った小さな言葉が、たしかに耳に届く。聞き間違いかと驚いて下を見るも、顔が押し付けられているから表情が見えない。背中にそっと手が回され、心臓が大きく鳴る。
「着替え、なくてごめんなさい……。でも、お風呂で温まって、毛布かぶって寝れば、大丈夫だよね……?」
抱きしめていた力を緩めれば、それに応えるように身体がわずかに離れた。遠慮がちに見上げてくる顔が、これ以上ないくらいに真っ赤だ。濡れた瞳が俺を捉え、瞬時に逸らされる。ぞくりと背筋を何かがはしった。
上気した頬に手を滑らせ、顎をなぞるとそっと顔が上がった。屈んで唇を合わせれば、くぐもった声とともに息が漏れる。啄み、至近距離のままその瞳をじっと見つめる。
「俺、ずっと我慢してたんだよ?」
「ん……」
「いいの?」
返事の代わりに、く、と服を掴まれる。それが合図かのように、目の前の唇に今度は乱暴に噛みついた。首筋を撫で、耳の後ろを擦れば、漏れる鼻にかかった声が俺の心を掻き立てる。
「んん……っ、まっ……、んぅ」
何か言おうとしているのを遮り、角度を変えて舌を差し込む。ぴくりと肩が震え、逃げる腰を掴んで抱き寄せた。縮こまっている舌をつつき、重ねて絡め合わせる。
こういうキスにあまり慣れていないことは分かっていたから、あまり早急にならないように気を付けながら、けれど心に余裕なんて全然無くて、ただじれったい感情を押さえつけて咥内を刺激していく。
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