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ごめん、と小さく謝られ、遠慮がちに見上げてくる。
「やだ、よね」
「嫌じゃないよ」
「でも……」
俺の様子がおかしいと察したのか、申し訳なさそうに眉を寄せた。何も悪いことなんてしていないのに、そうやってすぐに謝る姿すら、あの男の影響だと思えてくる。
「今は……、これからは、俺の事だけ見て」
たとえ過去の出来事だとしても、この身体に触れ、抱いたのだと思うだけで腹の底から嫌な感情が渦巻いてきて、思わず顔を顰めた。
もっと早く会っていれば、辛い思いなんてさせなかったのに。年齢の差なんてなくて、同じ学校に通っていたら、真っ先に傍に行けたのに。なんて、あり得ない現実を本気で想像してしまう自分は、どうかしている。
不思議そうな瞳が、何かを察したようにすっと色を変えた。両手が伸び、頬を包み込まれる。驚いていると、そのまま強く押し付けられた。ふふ、とおかしそうに息を漏らし、花さんが俺を見て目を細めた。
「そんな顔しないで」
そう言って笑う顔が綺麗で、愛おしくて、胸が締め付けられる。やっぱり俺は、この人の笑顔が好きだ。俺に向けてくれるその顔が、一番好きだ。
「前のことは、あんまり覚えてないの。だから……、わっ」
抱きつき、その勢いのままベッドに押し倒した。揺れて跳ね返る振動が、密着した身体から伝染する。
「う、重……」
「俺、花さんのこと大事にする」
「……ん」
「幸せにする。気持ちよくする」
「最後のは違う……」
頬に口づけると、くすぐったそうに身じろぎした。耳に、首筋に、鎖骨に、何度もキスを落としながら、そっと服を捲り上げる。脇腹を撫でれば熱い息が漏れ、それを飲み込むように唇を合わせた。
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