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全て入ったのか、下半身の鈍い感覚が止まった。頬を撫でられ、見上げれば欲情に満ちた瞳が降り注がれていた。
唇に触れるだけのキスをされる。再び触れ、今度は啄まれ、私を窺うように収まっている熱量が動き出す。
「はぁっ……」
ぎっちりと隙間なく密着し、中で蠢く度に苦しくて息が漏れる。それは苦痛などではなくて、徐々に心地よさを掻き立てていくような、じれったさを感じさせる。
だんだんと動きが早くなり、奥底の方から甘い感覚が湧き上がってくるのが分かった。体温が一気に上昇し、身体が準備を始める。
「大丈夫……? つらく、ない?」
「だい、じょうぶ……、……ん、……あっ」
「……は、なか、熱……」
次第に激しさを増し、奥を確実に突き上げられる。勢いよく押し込まれ、ずん、と重くぶつかる度に快楽が襲ってくる。声を我慢する余裕などなく、ただ開いた口から情けなく漏れ続けていく。
何度も、何度も突かれる動きに、身体が上下に激しく揺れる。次の瞬間、突然頭の中に何かが白く光り、目の前から葵くんの姿が消えた。
「……っ」
驚き、呼吸が止まった。中心を貫かれる感覚だけが絶えず襲い、視界に何も映らない。不安を感じたのも束の間、そこからじわじわと恐怖心が込み上げてきた。
あぁ、これは当時の記憶だ。鮮明に覚えているわけではないのに、ただ嫌な感情だけが記憶として身体に染みついているのだ。
怖い、どうしよう、怖い。大好きな人と身体を重ねているのに、こんなこと思い出したくない。今私の中にいるのは、あの人じゃないのに。
「あ、おい、く……」
たまらずに手を伸ばした。白い視界には自分の手も映らず、ただ空虚を彷徨う感覚が怖くてひたすらに名前を呼ぶ。
「あおいくん、あおいくん……っ」
助けを求めるように必死で呼ぶと、暖かいもので手を包み込まれた。その瞬間、一気に視界が元に戻っていく。薄暗い明かりの中、心配そうに私を見下ろす彼が、私の手を掴んでいた。
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