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いま重要なのはコイツを黙らせ、そんでブチのめすこと。力でゴリ押して力で押し潰して力でねじ伏せること。ただそれだけ。
裏鏡はただただなすすべなく、攻撃をガードするしかない状態だ。
流石のテメェも霊力ガッチガチドーピングパンチを連続で食らってたらそうなるか。反則使いつったって所詮はそんなもんだよな、だって反則使わねぇと戦いに勝てないクソザコだもんな。うんうん、知ってたよ。だからさ―――。
「あんま調子ぶっこいてんじゃねぇぞダボがぁ!!」
不意打ちと言わんばかりに、利き足に全力ドーピングをかけた。足の筋肉が数倍に膨れ上がる。横っ腹に狙いを定め、全力のスイングでコイツの横っ腹を蹴り飛ばした。
竜巻レベルで砂塵を巻き上げる風圧と、もはや爆音に等しい衝突音。渾身の右足横キックは、裏鏡なんぞ軽々と吹っ飛ばし、真後ろに生えてた木々を何百本も切り落とし、庭に生えてる森林を、一瞬でただのハゲた荒地に変えてしまった。
遠くで砂煙が舞う。俺から見て多分十か二十キロぐらい先、どうやらアイツはあそこまでぶっ飛ばされたらしい。まあだからといって終わらせるつもりなんざ毛頭ないんだが。
全身から霊力の膜を纏い、我流舞空術で砂煙が舞った所まで飛んでいく。その近くまで来ると、右手の平に光球を錬成する。煉旺焔星だ。
「それも、極限まで霊力ブチ込めてガッチガチに圧縮した、超特製のな……!!」
右手の平に乗った光球は野球ボールよりも遥かに小さい。だが発せられる熱と輝きは、当然親父との戦いのときの比じゃない。威力は親父のとき以上、いや、今までの煉旺焔星よりもずっと上だ。
「終わりにする……!! こんな何の得もねぇ、クソつまんねぇ喧嘩なんざ……!!」
狙いを数十キロ先にいるはずの裏鏡に狙いを定める。砂煙のキノコ雲がこれでもかと目印みたいに漂ってるから狙いやすい。まさに絶好の的だ。
これで、全てを終わりにする。親父も裏鏡も、ここで全部片付けて、俺とその仲間たちはこのクソみてぇな状況のその先に進むんだ―――。
「いや、それは不可能だ」
渾身の煉旺焔星を決めようと台詞を吐こうとした刹那。鼓膜を揺らした静謐で低い声音と、視界に突如として映ったその存在に、一瞬で背筋が凍結する。
反射的に右手の平に乗ってた煉旺焔星を、ソイツの左腕にブチこむ。
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