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焔星は花火みたく一瞬光り輝くが、やはりというべきか、爆発することなく一気に萎んでなくなってしまった。
何が起こったのか、そんなこと考えるまでもない。この眼に映っている今が、その全てを物語っている。
俺の視界の中心にしてその目前、今頃遥か彼方の地面で寝転がってるはずの裏鏡が、そこにいたのだ。
「……ふむ。流石に速いな」
だが、裏鏡もまた左腕が消し飛んでいた。
かつて火の球をいくら撃とうと傷つかず、竜位魔法とかいう外法でようやく身体を砕くことができたといった感じだったのに、今は自分の力で砕くことができていたのだ。
その事実に、心なしか目の前が明るくなっていくのを感じる。やはり復讐に駆られてたときとは違う、新しい未来に踏み出したからこそなのか。俺はあの頃より成長できたってことなのか。
だとすればこれは、大きな一歩だ。復讐に駆られてた頃の俺じゃ、絶対にたどり着けなかった境地。ただ親父を、ただ自分の何もかもを狂わせた全てを破壊する。そのためなら異形の力すら利用するとかいう外道に頼ってたからこそ、かつての俺はコイツに負けた。
でも今は違う。今の俺は、自分の力で、自分の編み出した技で戦ってる。だからこそ、コイツに一矢報いることができたんだ。
「舐められたものだ」
刹那、視界が急に真っ暗闇になった。唐突の暗転に思考が一瞬で真っ白になる。
「この俺が、お前程度の技で籠絡されるとでも思ったのか?」
右も左も、前も後ろも、上も下もわからない常闇から聞こえる奴の声。がむしゃらに周りを殴ったり蹴ったりするが、全く手応えがない。まるで空気に攻撃しているみたいで全てが空ぶる。
「ぐあ……!?」
動転するのもつかの間、足元から痛みすら覚える冷気が立ち上る。何が起こってるのか、そんなことを考える暇も感じる暇もなく、体がガッチガチに凍えていくのを肌で感じる。
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