白銀の暴威

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「だったら全部……!!」  焼き尽くす。その思いで体の奥底から霊力を引きずり出そうとするが。 「あれ……!? なん、で……!?」  霊力が湧いてこない。体の中にか細い霊力が、ほんの少し流れてるただそれだけしか感じない。  さっきまで湯水のように使えてたはずなのに、一体どうして。 「残念だ。まさかお前が、この程度の小技で仕留められる雑魚だったとは」  また暗闇からどこからともなく奴の声が聞こえてくる。反論しようと口を開くが、それよりも先に奴の御託が全てを握り潰していく。 「鏡術(きょうじゅつ)があればどうとでもなる。確かに浅はかな思考であった。魔法の深淵に目を向けていれば、あのときも鏡術(きょうじゅつ)など使うまでもなかったものを」 「はぁ? 待てや……!? ワカンねえ……!! 意味ワカンねぇよ、何言ってんだお前ぇ!!」  今まで経験したことのない、突然の視界の暗転にほとんどの思考が吹き飛び、がむしゃらにならざる得ない状態で、その言葉だけが明確に鮮烈に、俺の鼓膜を貫いた。  鏡術(きょうじゅつ)を使うまでもない。  かつて奴は鏡術(きょうじゅつ)だかなんだかよく分からない反則を使って俺と死闘を繰り広げた。奴が俺や弥平(みつひら)たちと戦って平然としていられたのは、俺らじゃどうしようもない反則を使っていたからという前提があってこそだったはずだ。  それを、アイツにとって戦いに勝つためには必要不可欠なはずだったそれを、使うまでもなかっただと。  だったら何か。今回の戦いで、テメェは反則を一切使ってないとでも言うのか。  いや、それはない。絶対にありえない。だったら今回の戦いのわけのわからなさをどう説明する。反則を使ってる、そう考えないと説明できないことばっかじゃないか。  今回の戦いは反則を一切使ってない、世界的にも許されるフェアな戦いだとでも言うのか。だとしたら許されない、あってはならない、そんなこと、絶対に―――。
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