白銀の暴威

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「……分かった。今考える……」  こんな身勝手の権化みたいな奴の言いなりにならなきゃならない現実が忌々しい。でも従わなければ確実に殺される。それも殺された後にどうやってやるのか知らんが蘇生させてまた殺すらしい。  もう嫌だ。クソみたいに悪い夢でも見てる気分だ。 「はぁ……要は俺のパワー不足って話だろ。さっきは反射的にぶつけちまったし、練りこみが甘かった自覚もある。ブチ込み具合もあんまりだったし、自信を持って攻撃できたとは」 「違う」  せめて最後まで言わせてくれよ。ただでさえ全てのモチベが低下してるってのに、今更だけど人の心ってのが無さすぎるにも程があるだろ。 「お前は学習能力がなさすぎる。俺の肉体を砕けたのは、天災竜王より授かった超能力によるものだ。それがなければ、お前は俺の肉体に傷一つつけられなかっただろう」 「でも今回は破壊できただろうが。現にさっきお前の片腕消し飛ばしたし、それがワカンねぇテメェでもねぇだろうがよ」 「だからこそだ。逆説的に、俺が超能力をあえて使わずに戦っているからだと判断できるだろう。俺は此度の戦いにおいて、直接的には鏡術(きょうじゅつ)を使用していない。それこそが、お前が``俺の片腕を消し飛ばせた理由``だ」  嫌な予感というか、絶対にありえないことだと、ついさっき否定したばかりの最悪の推測が、ものの見事に的中しやがった。  答えって奴は、いざ紐解くと大体誰にでも分かる簡単にして明瞭なもんだ。今回、俺が裏鏡(りきょう)と戦えているように見えたのは、怨敵への復讐を成し遂げて今までの自分よりもずっと強くなったから、などという少年漫画でありがちな困難を乗り越える度に強くなる系主人公の展開かと思われたが、そんなことは全くない。  ただ単に、ただ単純に、裏鏡(りきょう)が自分の能力に制限をかけて戦っていただけだった。全身に錘つきの服でも着て、あえて肉体に負荷をかけた状態で戦うといったような。  完全に舐められている。要は俺程度の相手、戦闘力に制限をかけた状態で軽く捻り潰せる程度の雑魚だと言われたようなものだ。  世界最強、だなんて流石に思ってないし思わないけど、こんな俺でも一応、流川(るせん)本家派の当主。破壊力とパワーだけなら、そこらの人外相手だろうとぶっ潰せる自信はある。人間相手なら尚更、わざわざ倒す方法を考えるまでもないほどに。
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