白銀の暴威

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 でもここまで雑魚扱いされたのは初めてだ。  あの親父でさえ俺と一騎打ちで殺り合うことを想定してチート級の武具で身を固めていたくらいなのに、まるで有象無象に対して言うかのごとく、取るに足らないクソ雑魚だと遠まわしに言い放ちやがったのだ。  何も見えない真っ暗な視界の中、奥歯を自らの奥歯で噛み潰す咀嚼力で噛み締める。  胸中に際限なく沸き立つ沸騰した感情。だが事実が圧倒的実力差を物語ってるだけに、何も言い返せない。  何を言おうと、あることないこと滅茶苦茶に言おうと、奴にとって俺がただの雑魚でしかないことは、既に証明されてしまったのだ。  それは、絶対に抗いようがない。復讐を乗り越えたことで決意を固めた今、目の前の現実から目を背けられるほど、今の俺はガキじゃなかった。 「とはいえ、森羅万象の真理。万物の深淵……それら全てをこの手に治めたい俺が、目前の概念を軽んじていたのも事実。それに気づかせてくれたことに関してのみ、深い感謝を送ってやろう」  相変わらず人の話を全く聞く気がないのは健在。  会話しているのに対話になってないせいで、俺がただ一人悶々としてるだけみたいになってんじゃねぇか。 「チッ……!! ふざけやが……!?」  がむしゃらに殴りかかろうとしたその瞬間。右隣を幽霊みたいなのが通り過ぎた気がして即座に方向転換。そっちに殴りかかるが、今度は左隣から声がする。  冷や汗が滲んだ。反射的に殴りかかった右手は空振りに終わり、その反対側から声が聞こえてくる状況。翻した背中がガラ空きだったことに気づくが、もう遅い。 「ここまでだな」  その言葉を最後に、真下へ真っ逆さまに落ちていくような感覚が身体全体を叩きつけられるやいなや、意識は一瞬にして彼方へと吹っ飛んだ。
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