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「一体、何が起こったんですか……!?」
あくのだいまおうとパオング、カエルたちを除いて、御玲だけがその呆気ない勝敗に、呆然としていた。
目を閉じて一人思考に耽っているパオングの肩を叩く。そう問いかけることしかできない己を恥じながら、地面に倒れふす主人と、呆然と立ち尽くす銀髪の少年を見つめた。
最初は澄男が圧倒しているように見えていた。それは澄男が佳霖の戦いを経て成長したからだと思っていたのだが、そう至った次の瞬間、澄男は一人何も無いはずの荒地をぐるぐるとその場で回り始めたと思いきや、空気を殴る蹴るといった意味不明な行動をし始め、そんな澄男から数メートルほど離れた所から呆然と立ち尽くす裏鏡が何やらブツブツと澄男に話しかけているという理解しがたい状況が数分続いた。
だが、それも束の間。
澄男との距離、その数メートルをまるで転移でもしたのかというくらいの一瞬のうちに間合いを詰めたと思うと、地面に巨大な蜘蛛の巣ができるほどの大威力で、澄男はなすすべもなく地面に叩きつけられてしまったのだ。
とにかく起こった全ての出来事が、まるで流れる水のように一瞬だった。一つ一つを認識し、理解する。その作業が、何一つ追いつかないほどに。
佳霖という化け物を死に物狂いで倒した男としては、似つかわしくない決着だった。
「ふむ……簡単に結論から述べるのであれば、澄男殿は魔法によって倒された、となるであろうな」
パオングはようやく目を開き、長い鼻をうねらせる。
「澄男さまを一瞬で倒す魔法なんて、あると思えませんが……」
「そんな大それた魔法など使っておらぬ。奴がこの戦いにおいて行ったことは、魔法を扱う上で極めて基礎的な戦術だ」
「極めて基礎的な戦術……?」
「``多重行使``である」
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