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御玲へと体の向きごと変え、丸い手の平を御玲に見せる。そこに二枚の真っ白な魔法陣が現れた。
「元来、魔法というものは重ねがけが基礎である。複数の魔法を適材適所、臨機応変に、なおかつあらゆる局面を想定した上で、対応を徹底する。今まで我が魔法を使うとき、複数の魔法陣が現れたことの方が多かったであろう?」
「そういえば……何の魔法を使っていたかはわかりませんでしたけど……」
「あれが本来の使い方である。特に無系は、単体使用することなどほとんどない。あるとすれば``顕現``ぐらいだが、それも本来であれば、あらゆる対策を施した上で使うのが定石である」
「転移を何者かに阻止される場合を想定しなくてはなりませんからね。まあパオングほどにもなると、少し大雑把に使っても問題ないのですが」
パオングとの会話にあくのだいまおうが割り込んでくる。
たしかに、今まで無系を一種類しか使わなかったときは、あまり良い結果には繋がらなかった。たとえばヴァルヴァリオン遠征時、``隠匿``で新設大教会に忍び込んだとき、十寺に所在があっさりばれてしまったことだ。
十寺曰く``魔法探知``を使っていたからわかったなどと言っていたが、あのとき``隠匿``ならば誰にも悟られないと思い込んでいたために、``隠匿``しか使わず、周囲を魔法で警戒するなどは一切しなかった。
もしもやっていたならば、十寺の所在をこちらが先に見つけられたかもしれない。それができなかったのは、あらゆる局面を想定し、魔法を行使しなかったためだ。
「でも納得できません。そもそも、裏鏡水月は魔法を使っていたんですか? 魔法陣が一切出てきませんでしたけど」
さっきまでの戦いを思い返す。
澄男はいつも通り、火の球を錬成して全てを焼き尽くす、力の限り殴る蹴るという何のひねりもない戦いをしていたが、裏鏡もまた、よく分からない力で無理矢理に、それも一瞬でねじ伏せたようにしか見えなかった。
それは数ヶ月前に初めて出会った頃と大して変わらない。魔法を使うには必ず魔法陣を描く必要があるはずで、魔法陣を描かなければ魔法自体使えないはずだ。
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