リザルト

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「あの少年の超能力だけは、この我をもってしてその深淵を視ること能わぬ……何が起きても、不思議に思わぬが吉であろう」  それは、いままであらゆる疑問に確実な助言を授けてくれたパオングに似つかわしくない、曖昧な答えであった。  現状、久三男(くみお)弥平(みつひら)と同等以上の智者の一人であるパオングをして、裏鏡(りきょう)の超能力の奥底を知ることはできない。これがどれほどの意味を持つのか、分からないわけがない。  パオングに分からないなら、もはやこの世界のほとんどの者が理解できないことを意味する。自分の拙い理解力など、天秤にかけるまでもない。まさに、純粋な意味で``不明``ということだ。  明確化できない、というさらに強い意味も込めて。 「まあ、もしかしたら超能力ですらない何か……という可能性も考えられますがね」  さっきまで沈黙していたあくのだいまおうが、少し薄暗くなった雰囲気を掻い潜って割り込んでくる。ふむ、と思考に沈むパオングをよそに目を丸くして立ち上がるが、あくのだいまおうは手で制する。 「あくまで仮説です。この世界には、魔法と精霊魔法、固有能力に超能力、そしてそれら全ての起源たる竜位魔法(ドラゴマジアン)しか存在しない。そのどれにも属さない力となると、もはやこの世界の枠外にある、純粋なる超常の力……ということになりますからね」 「あなたが言うと仮説に聞こえません……」 「それはすみません。ただ可能性として念頭に入れておくことを、推奨しておきます」  モノクルの位置を細長い指で調整し、再び裏鏡(りきょう)の方へ向き直るあくのだいまおう。  今日は逐一話に割り込んできては、煮え切らない話を投げてくるのはなんなんだろうか。  この世界の枠外にある、純粋なる超常の力。もはやわけがわからない。現実離れというか、荒唐無稽。あくのだいまおうが言うのだから、ただただ出鱈目な妄想ではないのは確かだろうが、それでも彼の言葉でなければ、酔狂にも程がある話だと切って捨てていただろう。
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