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澄男の身体から一瞬だけ白い光の粒子が湧き出ると、何度も何度も瞬きし、辺りを見渡す。そしてようやく目線が交わる。
「あ、あれ。見えるようになった……それにさっきまで全然湧いてこなかった霊力が嘘みたいに……」
「そなたは魔法毒に侵され、身体能力が大きく制限されていたのだ。いま解呪魔法で解毒したところである」
「マホードク……? ええと、いわゆるデバフみたいなもんか」
平たく言えば、とパオングが告げる。
魔法毒に関しての知識も専門職に比べるべくもないほどしか持ち合わせていないが、常識レベルの話をするなら、魔法によって付与され、魔法でしか決して解毒できない毒。
この世に何種類か存在し、高名な魔導師にのみ扱うことができると言われている一種の災厄である。
魔法でしか治せず、解毒しない限り効果が死ぬまで永続する凶悪さから、かつてより``不治の毒``と言われ、扱うことのできる魔道師とともに大衆からは強く恐れられてきた。
確か盲目は言葉どおり視界が真っ暗闇になってしまう毒。不活は霊力に関する全ての能力が低下する毒と、当主候補時代に勉強したことがあったか。
パオングに頭を支えられ、ゆっくりと立ち上がった澄男は身体の節々を調整した後、深く肩を落とした。
俯いたまま何も言わない彼をよそに、ずっと沈黙を守っていた裏鏡が身を翻す。
「待って」
怒気を込めた声音が一瞬、辺りの空気を強張らせる。
裏鏡は歩みを止め、ゆっくりと振り返る。ブラックホールを彷彿とさせる瞳が、容赦なくこちらへ向けられた。
「身勝手に喧嘩を売ってきて、庭を荒らして、私たちの予定を狂わせておいて、一言もなし? 勝ちさえすればもうどうだっていいって、そう思ってるの?」
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