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「面白い。そうでなくてはつまらんというもの」
「なんですって?」
「好きにするがいい。俺はいつでも相手をしてやる。勝てる見込みができたなら、俺の下へ来るがいい」
「その一方的に自分の言いたいことだけ言うのやめて。対話になってないわ」
「俺と対等になりたくば、俺から力づくで勝利を奪ってみせよ。それまで、俺はお前たちより上位の存在だと知ることだ」
「随分と傲慢ね。上か下か、そんなのでしか人を見れないなんて惨めだわ」
「強いか、弱いか。それは摂理だ。強い者がより上位に、弱い者はより下位に座する。その当然の理を解せぬと、お前はいうのか?」
「ええ、解せないわ。だからこの戦いで、私の主人を勝手に推し量らないで。私の主人は、そして私たちは、これから前へ進むんだから」
「負け犬の遠吠えも、ここまで吠えられると立派なものだな」
「ええ立派よ。当たり前じゃない。負け犬だって……意地ってもんがあるんだから!!」
庭に響くほどの大声。心の奥底から湧き出てくる激情が霊力となって、霊力が氷となって、地面に具現化する。
半径数百メートルぐらいになろうか。一面は一瞬にして、氷と霜だけの世界に様変わりする。
そう、この戦いは裏鏡の勝ちだ。白星は見事に奪い去られ、代わりに黒星を擦りつけられた。
たとえどんな理由であっても、どんな理不尽な状況であっても負けは負け。敗者が何を言っても立場がないのは、戦争であろうと喧嘩であろうと変わらない。
まさしく立派な負け犬の遠吠えだ。敗者の言い分など、どれだけ正統で筋が通っていようと価値はない。
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