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「いやー、旦那。ありゃあ勝ち目あるっすかねぇ」
黄緑色の体をした二足歩行の蛙、カエル総隊長は細長い両腕を頭の後ろに回し、あくのだいまおうに視線を向ける。
「ないでしょうね」
右手の指でモノクルの位置を調整する。あくのだいまおうから告げられたその言葉が酷く淡々としているせいか、まるで錘でも投げ渡されたように、その言葉が重くのしかかる。
「ないって……どういうことですか」
「そのままの意味ですよ」
目線すら合わせず、これまた淡々と言い放った。意味がないと知りながら問い返してなお、彼の答えは変わらない。
「残念なことですが、絶対に避けられない出来事というものは、否応なく存在するものです。澄男さんには気の毒ですが、彼の下した判断は正しかった」
「そんな。敗北が分かっている戦いなんて、何の意味があるんですか」
「どんな結果になろうとも、受けるしか道はありません。裏鏡水月……彼の存在を考えるならばね」
「裏鏡水月の存在……? 確かに彼の誘いを受けなければ、私たちの命はなかったかもしれませんが……」
「いやはや……この世界はまた、大変な存在に目をつけられてしまいましたね」
「ちょっと。質問にきちんと答えてください」
しかし、あくのだいまおうは答えない。それでも強く見つめるが、もう話に応じる素振りを見せなかった。
あくのだいまおうの底知れなさは分かっていたつもりだし、自分は全て分かっている風の発言しかしないが、今回はやけに曖昧だ。まるで裏鏡が得体の知れない何かであると言っているように聞こえる。
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