3人が本棚に入れています
本棚に追加
「上には上がいる、ということです。それも力だけではどうにもならないような者たちが」
御玲は人差し指を立てて、意気揚々と言ってくる。その聞き覚えのある言葉に、反論する気が削がれていく。
「そんな理不尽に満ちた者達が跋扈するこの世界で、あなたは理想を抱いて生きなければならない。現実に、屈してはいけないんです」
押し黙ったまま口を開こうとしない俺に痺れを切らしたのか、ダメ押しと言わんばかりに語りを続ける。
「あなたはこれから、私たちが束になっても敵わないような存在も含め、色んな存在を相手にすることになります。流川家は確かに強大な力を持ちますが、それはあくまで流川家としてでしかありません。私たちだけなら、世界からすれば矮小な存在でしかないですからね」
ようやく締めくくられた。御玲の言葉一つ一つが、心の奥に突き刺さってものすごく痛い。
自分で言うのもなんだが、俺は世界じゃ一番とは言わずとも五番以内に入ってる自信はあった。でも裏鏡や親父、十寺との戦い、そして天災竜王とかいう超常の存在と力を目の当たりにして、そんな自信は粉々に砕け散った。
矮小な存在と面と向かって言われるのは癪だし、悔しくて堪らないが、否定できるほど俺は強くない。
俺らよりも強い奴。強くなかったとしても、力じゃどうにもならない奴。
確かにそんなのが世界のどこかにいてもおかしくない。いや普通にいるだろう。俺がただ、知らないだけで。
「あなたが心がけるべきことは、負けた喧嘩をウジウジと振り返ることじゃない。たとえどんなことがあっても、どんな存在が相手だろうとも、前を向き、己の理想を突き通すこと。この言葉、絶対に忘れないで下さい」
そんな無茶苦茶なことを御玲は凛とした表情で言ってくる。
確かに世間の道理なんざ知らないし、これからどんな奴が待ち受けてるのかも分からない。でも一度掲げた理想は譲る気もなければ捨てる気もない。
最初のコメントを投稿しよう!